NXP、Arm Cortex-M33開発エコシステムを提供
著者 Pete Bartolik(ピート・バートリック) 氏
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-05-09
マルツ掲載日:2024-09-23
Arm® Cortex®-M33コアプロセッサは、低消費電力で高性能なマイクロコントローラ(MCU)ファミリで、セキュリティとデジタル信号処理機能が強化されています。これらのMCUは、幅広いIoTアプリケーションや組み込みアプリケーションに適していますが、これらのMCUを使用した製品の設計は、特にArmアーキテクチャに精通していない開発者にとって困難な場合があります。
NXP Semiconductorsは、Armベースのマイクロコントローラのリーディングプロバイダとして、自社のMCUXpresso開発プラットフォームでこの課題を解決することを目指しています。
ArmのRISC(縮小命令セットコンピューティング)プロセッサは、低消費電力と高性能が重要なスマートフォンや民生用電子機器などの市場セグメントで圧倒的なシェアを占めています。
Cortex-M33プロセッサは、エネルギー効率に優れ、アクティブ時およびスリープ時の消費電流を低減する低消費電力モードを提供するように設計されており、産業制御、スマートホーム、ウェアラブルデバイス、IoTなどの幅広いアプリケーションを駆動することができます。
これらは開発者に高度な柔軟性とスケーラビリティを提供しますが、性能、消費電力、フットプリントの理想的なトレードオフを達成するために慎重な最適化も必要となります。
Cortex-M33 MCUは、他のCortex-Mプロセッサとのバイナリ互換性を保証するArmのEABI(Embedded Application Binary Interface)をサポートしており、Cortex-Mの既存コードを変更せずに実行できます。この互換性により、既存のソフトウェアツール、ライブラリ、ミドルウェアへのアクセスが可能になります。
NXPのMCXポートフォリオ
NXPはArmベースのMCUのトップメーカーの1つであり、汎用製品や自動車産業向け製品などを製造しています。同社のMCXポートフォリオは、拡張されたスケーラビリティと画期的な製品機能を備え、産業市場やIoT市場全体の電力効率に優れたエッジデバイスの基盤として位置付けられています。
MCX MCUは、以下2種類の製品ラインで構成されています。
・MCX Nシリーズ
MCX Nシリーズは、最大150MHzで動作するデュアルCortex-M33コアを搭載し、機械学習(ML)アクセラレーション用のeIQ® Neutronニューラルプロセッシングユニット(NPU)を備えた産業用やIoT用のMCUです。インテリジェントなペリフェラルとアクセラレータを搭載した高性能かつ低消費電力のこれらのMCUで、マルチタスク機能と効率的な性能を提供します。
・MCX Aエッセンシャルシリーズ
MCX Aエッセンシャルシリーズは、高精度データコンバータなどの高度なアナログ機能、コスト制約、市場投入までの時間短縮が重視されるアプリケーション向けに重要な機能を提供するよう最適化された、シングルコアCortex-M33 MCUの製品ラインです。
この記事では、MCX A MCU(図1)とその開発ツールに焦点を当てます。MCX Aシリーズは、産業用通信、スマートメータ、オートメーションおよび制御、センサ、低消費電力およびバッテリ駆動のデバイスなど、さまざまな市場の幅広いアプリケーションをサポートしています。コアとペリフェラルが共通であるため、開発者は簡素化されたソフトウェアの開発、容易な移行、アップグレードを実行できます。
図1:NXPのMCX Aシリーズ マイクロコントローラの外観。(画像提供:NXP)
MCX Aシリーズの各デバイスには、CPUと独立して動作し、より低い周波数と消費電力で動作することが可能なスマートペリフェラルのセレクションが含まれています。これらのペリフェラルにより、設計者はより小型のパッケージを利用し、基板設計を簡素化し、システムの部品表(BOM)コストを削減することができます。
MCX A MCUに含まれるペリフェラルは以下のとおりです。
・バッファを内蔵したシリアル通信、プログラム可能なデータ収集範囲、DMA
・混合信号A/Dコンバータ(ADC)
・D/Aコンバータ(DAC)
・平均化とピーク検出のインテリジェンスを内蔵したオペアンプ
・デッドタイム制御、モータアプリケーション用エンコーダを備えたFlexPWM(パルス幅変調器)
また、MCX A MCUは、ダイナミック電圧/周波数スケーリング(DVFS)を可能にする電源管理ユニット(PMU)と、作業負荷や動作条件に応じて消費電力を最適化するアダプティブパワーコントロール(APC)も備えています。これらのデバイスには、64KBまたは128KBのフラッシュメモリと16KBまたは32KBのSRAMが搭載されており、すべてのRAMデータをディープパワーダウンモードまで保持できます。
Cortex-M33コードバスに接続された4KBの低消費電力キャッシュコントローラ(LPCAC)により、データと命令が低レイテンシで利用できるようになります。プロセッサの性能をシステムメモリの性能から切り離すことができるため、他のペリフェラルのバス可用性が向上します。この機能により、検出と制御のアプリケーションで最高のI/O性能と処理性能を達成することができます。
MCX A MCUは、A14xシリーズでは48MHz、A15xシリーズでは96MHzで動作します。MCX A MCUでは、1.7V~3.6Vで動作するキャップレスLDO電源サブシステムを採用しています。このデバイスは、以下のようにさまざまなモードでの低消費電力を特長としています。
・内蔵フラッシュからCoremarkを実行するアクティブモード時に59μA/MHz(+25℃で3V)
・ディープスリープ時に6.5μA、SRAMフルリテンション時に10μsウェイクアップ(+25℃で3V)
・2.78msウェイクアップでのディープパワーダウンで400nA未満
MCX A MCUには、オンボードPHYを備えたフルスピードUSBデバイスコントローラが搭載されており、PCやその他のデバイスとの接続が可能です。USBサブシステムは、ブートROMを介したインシステムプログラミング(ISP)を特長としており、USBインターフェースを使用して製品をフィールドアップデートすることができます。
モデルによっては、26~52本の汎用入出力(GPIO)ピンを利用できます。シリアル通信インターフェースには、1つのI²C、2つのSPI、3つのUARTが含まれます。また、デッドバンドを挿入して相補的なPWMペアを生成できる3つの32ビットタイマと、1つの低消費電力タイマが含まれています。電源電圧は1.71V~3.6V、動作温度は-40℃~+125℃です。
たとえば、A14xシリーズのMCXA143VLHは、52本のGPIOピンを備え、最大48MHzで動作し、128KBのフラッシュメモリと32KBのSRAMをLQFP64パッケージに搭載しています。また、15xシリーズのMCXA152VFTは、52本のGPIOピンを備え、最大96MHzで動作し、64KBのフラッシュメモリと16KBのSRAMをQFN48パッケージに搭載しています。
MCUXpressoの活用
これらのMCUは、コスト、性能、電力効率のバランスを提供します。より多くのGPIOピンをサポートするため、設計者はより小型のパッケージを使用し、よりシンプルな基板設計を行うことができます。
このシリーズは、MCUXpresso開発者エクスペリエンスを活用し、ソフトウェア、ツール、セキュアプロビジョニングによって開発プロセスを円滑化することで設計サイクルを加速し、開発者がアプリケーションを作成、デバッグ、最適化できるようにします。MCUXpressoプラットフォームには以下が含まれます。
・MCUXpresso IDE
コード編集、コンパイル、デバッグ、フラッシュプログラミングをサポートする統合開発環境
・MCUXpresso Config Tools
開発者がピン、クロック、ペリフェラル、セキュリティの機能を設定するのに役立つグラフィカルツールのセット
・MCUXpresso SDK
ドライバ、ミドルウェア、ライブラリ、サンプルのコレクションを提供するソフトウェア開発キット
FRDM-MCXA153(図2)を含むMCX Aシリーズ用のNXP開発ボードは、A14xおよびA15xのマイクロコントローラを使用したアプリケーションの迅速な試作と開発のために設計されています。
図2:FRDM-MCXA153開発ボード。(画像提供:NXP)
これらのボードは小型で、設計プロトタイプに簡単に組み込むことができます。業界標準のヘッダは、迅速な評価と試作のためのストレートなI/Oアクセスを提供します。Arduinoヘッダ、FRDMヘッダ、Pmod、mikroBUSなどの拡張オプションにより、開発者は容易に機能やコンポーネントを追加できます。
その他の開発者向け機能には、統合されたオープン標準のシリアルインターフェース、外部フラッシュメモリ、CMSIS-DAPプロトコル付きオンボードMCU-Linkデバッガなどがあります。開発者は、NXPのMCUXpresso for Visual Studio CodeまたはEclipseベースのMCUXpresso IDE、あるいは安全認証を提供するIARおよびKeilのIDEを使用して作業することができます。
NXPはまた、高レベルのソフトウェアサンプル、コードスニペット、デモを含むアプリケーションコードハブ(ACH)リポジトリも提供しています。これらのサンプルはSDKとペアになっており、NXPのIDEやACH webインターフェースから直接アクセスできます。
まとめ
NXPのMCX Aシリーズ マイクロコントローラは、スマートメータ、オートメーション、制御、低消費電力/バッテリ駆動デバイスなど、幅広い組み込みアプリケーションに適した基本機能と革新的なパワーアーキテクチャを備え、開発者に低コストでフットプリントの小さいソリューションを提供します。
NXPが提供するマイクロコントローラ、評価ボード、MCUXpressoプラットフォームは、高度な編集やコンパイル、デバッグの機能を活用し、開発者が容易に技術革新、最適化、市場投入を実現するのに役立ちます。
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