マルツTOP > APPLICATION LAB TOPページ おすすめ技術記事アーカイブス > ミッドレンジの優れたモータインバータにGaNパワーデバイスを使用する方法

ミッドレンジの優れたモータインバータにGaNパワーデバイスを使用する方法

著者 Bill Schweber 氏
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-03-05

マルツ掲載日:2024-07-22



 エネルギー源のより効率的な使用の推進、より厳格な規制要件、より低温での動作による技術的利点はすべて、電気モータの消費電力を削減する最近の取り組みを後押ししています。シリコンMOSFETによるスイッチング技術は広く普及していますが、重要なインバータアプリケーションの性能や効率の目標に対する厳しい要件に対応できないことが多くあります。

 その代わりに、コストやパフォーマンス、信頼性、使いやすさの面で改善され進歩したワイドバンドギャップ(WBG)FETデバイスである窒化ガリウム(GaN)デバイスを使用して、これらの目標を達成することができます。GaNデバイスは現在の主流であり、中程度の電力レベルのインバータの優先的な選択肢となっています。

 この記事では、Efficient Power Conversion Corporation(EPC)が提供するGaNベースの最新世代のFETで、高性能のモータインバータを実現する方法について検討します。また、設計者がGaNデバイスの特性を理解し、設計作業を高速化するのに役立つ評価ボードも紹介します。

インバータとは何か

 インバータの役割は、モータを駆動する電圧波形を生成し、調整することです。モータは、多くの場合、ブラシレスDC(BLDC)タイプです。インバータは、モータのスムーズな始動と停止、逆転、加速率など、さまざまな要件を満たすために、モータの速度とトルクを制御します。また、負荷の変化にかかわらず、目的のモータ性能を達成し、維持することを保証する必要があります。

 可変周波数出力のモータインバータとACラインインバータを混同しないでください。ACラインインバータは、車のバッテリなどの電源からDCを取り込み、正弦波に近い固定周波数の120/240VのAC波形を供給し、ライン駆動型デバイスに電力を供給するために使用します。

GaNを検討する理由は何?

 GaNデバイスは、シリコンデバイスに比べてスイッチング速度が速く、ドレイン-ソース間オン抵抗(RDS(ON))が低く、熱性能が優れているなど、魅力的な特性を備えています。RDS(ON)が低いため、より小型で軽量なモータドライブに使用でき、電力損失が低減し、電動バイクやドローンなどのアプリケーションでエネルギーとコストを節約できます。スイッチング損失が低いため、モータドライブの効率が向上し、軽量電気自動車(EV)の走行距離を延ばすことができます。

 また、スイッチング速度が高いため、ロボットなどの精密なモータ制御を必要とするアプリケーションに不可欠な低レイテンシのモータ応答が可能になります。GaN FETは、より強力で効率的なフォークリフトモータドライブの開発にも使用できます。GaN FETは電流処理能力が高いため、より大型で強力なモータに使用することができます。

 エンドアプリケーションにとっての最終的な利点は、サイズと重量の削減、電力密度と効率の向上、そして熱性能の向上です。

GaNデバイスを使ってみよう

 どのようなパワースイッチングデバイスの設計においても、特に電圧と電流がミッドレンジの場合は、デバイスの細部と固有の特性に対して注意を払う必要があります。

 GaNデバイスには、デプレッションモード(d-GaN)とエンハンスメントモード(e-GaN)という2つの内部構造オプションがあります。d-GaNスイッチは通常は「オン」であり、負電源を必要とするため回路設計が複雑になります。一方、e-GaNスイッチは通常は「オフ」であるため、回路アーキテクチャはシンプルです。

 GaNデバイスは本質的に双方向性であり、逆電圧がゲートしきい値電圧を超えると導通を開始します。さらに、設計上アバランシェモード動作ができないため、定格電圧が十分でなければなりません。降圧、昇圧、ブリッジDC変換トポロジの場合、バス電圧が最大480Vであれば、一般に600Vの定格で十分です。

 GaNスイッチは基本的なオン/オフの電力スイッチング機能はシンプルですが、パワーデバイスであるため、設計者はターンオン/ターンオフの駆動要件、スイッチングのタイミング、レイアウト、寄生の影響、電流フローの制御、回路基板上の電流・抵抗(IR)降下などを慎重に検討しなければなりません。

 多くの設計者にとって、評価キットを活用することは、GaNデバイスの性能とその使用方法を理解するための最も効果的な方法です。このようなキットでは、各種の構成や電力レベルで個別のGaNデバイスと複数のGaNデバイスを使用します。また、コンデンサ、インダクタ、抵抗器、ダイオード、温度センサ、保護デバイス、コネクタなど、関連する受動部品も組み込まれています。

低電力のデバイスから始める

 低電力GaN FETの優れた例として、EPC2065があります。このデバイスのドレイン-ソース電圧(VDS)は80V、ドレイン電流(ID)は60A、RDS(ON)は3.6mΩです。このデバイスは、はんだバー付きのパシベーション処理されたチップでのみ提供され、サイズは3.5×1.95mmです(図1)。


図1:80V、60AのEPC2065 GaN FETは、一体型はんだバーを備えたパシベーション処理されたチップデバイスです。(画像提供:EPC)

 他のGaNデバイスと同様に、EPC2065のラテラルデバイス構造と多数キャリアダイオードにより、極めて低い総ゲート電荷(QG)と逆回復電荷(QRR)ゼロを実現しています。このような特性を備えたEPC2065は、非常に高いスイッチング周波数(最大数百kHz)と低いオンタイムが有利な状況や、オン状態損失が優位な状況に適しています。

 このデバイスは、20A/500W動作用のEPC9167KITと、20A/1kW動作用の高出力EPC9167HCKITという、類似した2種類の評価キットによりサポートされています(図2)。どちらの評価キットも、3相BLDCモータ駆動インバータボードです。


図2:EPC9167ボードの下面(左)と上面(右)を示します。(画像提供:EPC)

 EPC9167KITの基本構成では、スイッチ位置ごとに1つのFETを使用し、位相あたり最大15ARMS(公称値)および20ARMS(ピーク値)の電流を供給できます。

 一方、より高電流のEPC9167HCの構成では、スイッチ位置ごとに2つの並列FETを使用し、最大20ARMS/30ARMS(公称値/ピーク値)の出力電流を供給できます。これはGaN FETを並列に構成し、より高い出力電流を得ることが比較的容易であることを示しています。ベースとなるEPC9167ボードのブロック図を図3に示します。


図3:BLDC駆動アプリケーションにおけるEPC9167ベースボードのブロック図を示します。高電力のEPC9167HCでは、スイッチごとに2つのEPC2065デバイスが並列に搭載されていますが、低電力のEPC9167では、スイッチごとに1つのFETしか搭載されていません。(画像提供:EPC)

 EPC9167KITには、ゲートドライバ、ハウスキーピング電源用の安定化補助電源レール、電圧センス、温度センス、電流センス、保護機能など、完全なモータドライブインバータをサポートする重要な回路がすべて組み込まれています。

 EPC9167は、各種の互換コントローラに対応し、さまざまなメーカーによってサポートされています。既存のリソースを活用することで、モータドライブインバータやDC/DCコンバータとして速やかに構成でき、短期間での開発が可能です。

より高い電力へ

 電力処理範囲の高いFETには、100V/101Aの定格と、最大1.8mΩのRDS(ON)を特徴とするGaN FETであるEPC2302があります。EPC2302は、40~60Vの高周波DC/DCアプリケーションや48VのBLDCモータドライブに適しています。このGaN FETは、EPC2065のはんだバー付きのパシベーション処理されたチップパッケージとは対照的に、優れた熱管理のために上面が露出している3×5mmの低インダクタンスQFNパッケージに収納されています。

 ケース上部の熱抵抗は1Wあたりわずか0.2℃と低いため熱特性に優れ、冷却の課題を緩和しています。上面が露出しているため、上面側の熱管理が向上します。また、サイドウェッタブルフランクにより、リフローはんだ工程で側面パッドの表面全体がはんだで湿潤されることが保証されます。これにより銅が保護され、この外部側面領域でのはんだ付けが可能になり、光学検査が容易になります。

 EPC2302のフットプリントは、RDS(on)と電圧定格が同程度であるクラス最高のシリコンMOSFETの半分以下のサイズであり、QGとQGDは大幅に小さく、QRRはゼロです。その結果、スイッチング損失とゲートドライバ損失が低減されています。EPC2302は10ns未満の短いデッドタイムで動作して高効率を実現すると同時に、ゼロ値のQRRによって信頼性が向上し、電磁干渉(EMI)を最小限に抑えられます。

 EPC2302を実行するために、EPC9186KITモータコントローラ/ドライバ電源管理評価ボードは最大5kWのモータをサポートし、最大150ARMSおよび212APEAKの出力電流を供給できます(図4)。


図4:EPC2302用のEPC9186KIT 5kW評価ボードの上面(左)と下面(右)を示します。(画像提供:EPC)

 この高い電流定格を達成するために、EPC9186KITはスイッチ位置ごとに4つの並列GaN FETを使用し、この方法によって高い電流レベルに簡単に到達できることを実証しています。

 このボードは、モータドライブアプリケーションで最大100kHzのPWMスイッチング周波数をサポートし、ゲートドライバ、安定化された補助ハウスキーピング電源、電圧/温度センシング、正確な電流センス、保護機能など、完全なモータドライブインバータをサポートするための重要な機能をすべて搭載しています。

まとめ

 モータインバータは、基本的な電源とモータをつなぐ重要な役割を果たしています。インバータの小型化、高効率化、高性能化という目標は、ますます重要になっています。設計者は、ミッドレンジのインバータで使用される重要なパワースイッチングデバイスのためのプロセス技術を選択できますが、EPCなどが提供するGaNデバイスの使用が適しています。




免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKey Electronicsの意見、信念および視点またはDigiKey Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

 

このページのコンテンツはDigiKey社より提供されています。
英文でのオリジナルのコンテンツはDigiKeyサイトでご確認いただけます。
   


DigiKey社の全製品は 1個からマルツオンラインで購入できます

※製品カテゴリー総一覧はこちら



ODM、OEM、EMSで定期購入や量産をご検討のお客様へ【価格交渉OK】

毎月一定額をご購入予定のお客様や量産部品としてご検討されているお客様には、マルツ特別価格にてDigiKey社製品を供給いたします。
条件に応じて、マルツオンライン表示価格よりもお安い価格をご提示できる場合がございます。
是非一度、マルツエレックにお見積もりをご用命ください。


ページトップへ