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安全規格IECとULに準拠する小型で柔軟かつ正確な回路保護の実現

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 氏
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-01-13

マルツ掲載日:2023-04-17


 USB Type-C ACアダプターやネットワーク機器、民生用や産業用の電子機器などは、電圧、電流、温度条件において外部に損傷を与える可能性があるため、デバイスとエンドユーザーを保護する必要があります。従来からのヒューズや正温度係数(PTC)サーミスタを使用することで、ある程度の保護を実現できます。

 しかし、ますます多様化する多くのアプリケーションでは、より高速な応答時間、プログラム可能でリセット可能な過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、不足電圧ロックアウト(UVLO)、過温度保護(OTP)、ソフトスタート、逆電流ブロッキング(RCB)など、より高いレベルの保護と柔軟性を必要としています。

 USB Type-C ACアダプターの場合、USB Power Delivery(電力供給)仕様で定義されたタイミング要件に準拠した高速ロールスワップ(FRS)にも対応する必要があります。

 これらの機能をすべて実装した保護回路の設計は可能ですが、時間がかかります。また、安全規格ULやIEC 62368-1の認証を取得しようとすれば、さらに開発期間が延びます。また、ディスクリート部品を使用したソリューションでは、全体のフットプリントが増大する可能性があります。

 設計者は、eFuse(電子ヒューズ)レギュレータを利用することで、安全規格ULとIECに適合したコンパクトで正確な保護機能を迅速に実装することができます。これらの保護ICには、「保護を保持することも障害除去時に自動回復させることも可能になるように、保護閾値をプログラム可能」という設計の自由度があります。

 また、効率を最大化する低い「オン」抵抗のほか、突入電流を最小限に抑えるソフトスタートが搭載されています。一部のモデルでは、USB Type-CのACアダプターで使用できる認証済みFRS機能を搭載しています。

 この記事では、eFuseを取り上げ、概要、電圧/電流定格、および代表的なアプリケーションを紹介します。次いで、OCP、ソフトスタート、OVP、UVLO、OTPなどの保護機能をどのように実装するかを見ていきます。最後に、特定のアプリケーション向けに最適化されたLittelfuse製の一連のeFuse ICと、開発期間を短縮するためのシステム統合と集積上の留意点を紹介します。

eFuseの選定基準

 特定のアプリケーションにおけるeFuseの要件は、システムの動作電圧と動作電流との強い関連性があります。入力が5VDC、電流が2A程度までの低電圧/低電流システムでは、OCP、OTP、UVLO、ホットスワップやホットプラグ時の突入電流抑制(dV/dt)などの機能が一般に必要となります。

 消費電流が2~6A、入力電圧が24VDCまでのアプリケーションでは、OVP、電流制限/OCP、および「パワーグッド」信号が必要になる場合がよくあります。6A以上の電流と24VDC以上の電圧を使用するアプリケーションで一般的なのは、システム監視やOCP、RCBのための電流タイマや電流モニタです(図1)。


図1:eFuseの機能群は、アプリケーションの入力電圧(横軸)と入力電流(縦軸)に強い相関があります。(画像提供:Littelfuse)

電流保護とソフトスタート

 過電流により、電子部品は、定格動作温度を超えるため、性能が損なわれて寿命が縮まります。そのため、電流保護回路は電流(I)を監視します。Iが定格動作電流「Iout」を超えて設定されているレベルである「I-limit」を超えた場合、入力電流はまず数μsの間、一定レベルに安定化され、その後で安全なレベルまで自動的に低下します。

 使用するeFuseによって、I-limitの値は固定とすることもプログラム可能とすることもできます。過電流が発生すると、eFuseは一定時間(通常、数ms)、入力電流を減らし、その後再起動して、障害が解消されたかどうかを確認します。

 障害が残っている場合には、eFuseは再び自動で電流を安定化して低減し、数ms待ってから再起動します。「障害がなくなるまで電流を減らして再起動する」というシーケンスは、「ヒカップモード」保護と呼ばれることもあります。短絡状態の場合には、入力電流が急上昇し、eFuseは直ちに入力電流を安全なレベルまで下げます(図2)。


図2:eFuseは、過剰な負荷電流から保護するためのオートリトライ機能が付いた電流制限機能と、短絡保護機能を搭載しています。(画像提供:Littelfuse)

 ソフトスタートは、デバイスをオンにしたときに流れる突入電流を制限します。ソフトスタートがない場合は、プリント(回路)基板のトレースと部品の比較的低いインピーダンスだけが、唯一の電流制限要素になります。

 突入電流が大きいと、電源回路や部品が損傷する場合があります。ソフトスタートはゆっくりとeFuseを起動させることで、スルーレートを制御して突入電流を制限します(図3)。ソフトスタートの速度は、固定にすることもプログラム可能にすることも可能です。


図3:eFuseのソフトスタートは潜在的に有害な突入電流を防止します。固定にすることも、プログラム可能にすることもできます。(画像提供:Littelfuse)

UVLOとOVP

 電圧が高すぎても低すぎても、システムが誤動作したり損傷したりする可能性があります。eFuseのUVLO(Under Voltage Lock Out:不足電圧ロックアウト、つまり低電圧誤動作防止)は、入力電圧があらかじめ設定された閾値より低い場合には、デバイスが動作しないようにします。

 また、入力電圧の立ち上がりが遅かったり、電池のように内部抵抗が大きい電源の場合、負荷電流の上昇に伴って電圧が低下するものの、UVLOの閾値より下がるかと思えば再び上がったりすることが何度もあります。そのような場合、UVLO機能は不安定になります。そこで、ヒステリシス(遅れ)が約150~300mVのUVLO回路を使用すると、UVLO機能が安定し、スムーズに動作するようになります。

 OVPは、過大な電圧によるストレスや損傷からデバイスを保護するものです。過電圧状態を検出すると、eFuseが直ちに電圧をクランプ(固定)してシステムを保護し、次いでOVPの機能を停止します。また、内部抵抗を経由して出力コンデンサをグランドに放電します。電圧が規定値まで下がると、eFuseは自動的にオンとなります(図4)。OVPの閾値は、固定とすることもプログラム可能とすることもできます。


図4:入力電圧は、OVPクランプ値に達すると、それ以上には上がらなくなり、eFuseが出力をオフにしてシステムを保護します。(画像提供:Littelfuse)

熱保護

 過度な温度は損傷や機能低下の原因となるため、eFuseには内部温度センサが搭載されています。OTP(過温度保護)は通常、2段階のプロセスで実装されます。その第1段階である熱安定化温度は通常125℃前後で、この温度でeFuseは電流を制限し、温度上昇を止めようとします。

 熱安定化温度が上昇し続け、デバイスの接合部温度がサーマルシャットダウン閾値(TSHDN)(通常140℃程度)を超えると、eFuseはオフになります。OTPの第2段階はヒステリシスです。これは、内部温度がTSHDNより20℃下回ると、eFuseが再起動するというものです(図5)。


図5:OTPには、温度が所定量下がるとeFuseを再起動させるヒステリシスが搭載されています。(画像提供:Littelfuse)

電池駆動デバイス向けの小型5VのeFuse

 Bluetoothヘッドセット、ウェアラブル、タブレットPCなどのアダプタ駆動デバイスの設計者には、OVP、OCP、ソフトスタートを備えた小型ソリューションとして、DFN2X2_8Lパッケージの5V/5A定格のLS0505EVD22や、SOT23_3Lパッケージの5V/4A定格のLS0504EVT233を使用することをお勧めします(図6)。

 内部スイッチのオン抵抗は50mΩであるため、消費電力が最小限に抑えられます。OVPは過大な電圧が発生すると直ちに反応し、出力コンデンサを放電します。電流制限閾値は外付け抵抗で設定されます。

 過電流や短絡が発生すると、OCPはヒカップモードで動作します。自動ソフトスタート機能により、電圧の立ち上がりがスムーズに行われ、突入電流が安全なレベルに制限されます。


図6:eFuse LS0504EVT233は、スペースに制約のあるアプリケーションで使用できるように、小型のSOT23パッケージを採用しています。(画像提供:Littelfuse)

18V/5AのeFuse

 LS1205EシリーズのeFuseは、動作電圧範囲が2.7~18VDC、定格電流5Aで、ハードディスクドライブ、ソリッドステートディスクドライブ、およびノートパソコンやネットワーク機器などのアダプタ駆動機器での使用に適しています。

 このeFuseは、オン抵抗が25mΩのスイッチを搭載し、10ピンのDFN3×3パッケージに収納されています。備えている機能としては、プログラム可能なソフトスタート時間、プログラム可能な電流制限閾値(最大5A)、短絡保護、UVLO、フォールドバックOTPなどがあります。以下の2つのモデルがあります。

・LS1205EVは、選択可能な3つの入力電圧範囲を備えています。出力クランプ電圧とUVLO閾値は、選択された入力電圧範囲に基づいて決定されます。

・LS1205EFは、UVLO、OVP、短絡、サーマルシャットダウンフォールトの発生を知らせるオープンドレインフォールトインジケータ機能を搭載しています。

28VのeFuse(RCBとFRS機能を搭載)

 RCB機能やFRS機能とThunderboltまたはUSB Type-CによるPD(給電/充電)機能を必要とするノートパソコンやタブレットコンピュータ、ドッキングステーション、ネットワーク機器の設計者には、OCP、OVP、短絡、ソフトスタート、OTP機能を備えた28V/6AのeFuseレギュレータLS2406ERQ23を使用することをお勧めします(図7)。

 このeFuseレギュレータの電源スイッチには24mΩのオン状態抵抗を搭載しており、通常動作時の消費電力を最小限に抑えます。また、OCP、OVP、およびソフトスタート機能はプログラム可能です。OTPは、デバイス冷却時の自動回復機能を備えています。

 このeFuseは、イネーブル信号(EN)の論理状態にかかわらず、RCB機能を常時オンにしていることが特長です。FRS機能と入出力一体型放電機能は、USBのPD仕様に適合しています。

 LS2406ERQ23は、寸法2.5mm×3.2mmで薄型の16ピンQFNパッケージに収納されて提供され、UL/CSA 62368-1に準拠したUL認定品です。


図7:USB Type-CによるPD用に逆電流ブロッキングとFRSをサポートするeFuse LS2406ERQ23の典型的な応用例(画像提供:Littelfuse)

基板レイアウトのガイドライン

 LS1205E、LS0505EVD22、LS0504EVT233のeFuse ICシリーズについて、実装を成功させるための基板レイアウトに関する一般的な留意点を示します。

・IN端子とグランド(GND)間、およびOUT端子とGND間に0.1μF以上のセラミックデカップリングコンデンサを配置する必要があります。ホットプラグ用途の場合のように入力パワーパスインダクタンスが無視できる場合は、このコンデンサは不要です。

・デカップリングコンデンサは、IN、OUT、GND端子のできるだけ近くに配置することで、これらの接続によって形作られるループの面積を最小にする必要があります。

・高アンペアパワートレース(電力線)は、予想される最大電流の2倍以上の電流を流せるサイズであると同時に、できるだけ短いものに抑える必要があります。

・eFuseのGND端子は、プリント基板のグランドプレーンに直接接続しなければなりません。プリント基板のグランドプレーンは、アイランド型にするか、または銅製プレーンにする必要があります。

 LS1205Eシリーズの場合のみ:RILIM、コンデンサSS(CSS)、EN(イネーブル信号)用抵抗などのサポート部品は、対応する接続ピンのできるだけ近くに配置し、その際、部品の反対側をGNDに接続するためのトレース長は最短にしてください。また、トレースは、プリント回路基板上でスイッチング信号に連結しないように配置する必要があります。さらに、RILIMとCSS部品のトレース長をできるだけ短くすることで、電流制限の値とソフトスタートのタイミングに対する寄生成分の影響を最小限に抑える必要があります。

 LS2406ERQ23については、USB Type-Cケーブルの短絡保護やFRS部品に関するレイアウト上の留意点をデータシートでご確認ください。

まとめ

 ユーザーとデバイスの両方を保護し、適用される規格を満たすために、設計者にはOVP、OCP、ULVO、OTP、逆電流ブロッキングなどの様々な機能を備えた集積保護eFuseレギュレータを使用することをお勧めします。プログラム可能な保護閾値とリセット機能により、eFuseは柔軟な設計を可能にしています。

 また、効率を最大化するとともに突入電流を最小化するソフトスタート機能を備えた、オン抵抗が低いスイッチを備えています。一部のモデルでは、USB Type-CのACアダプターで使用および動作可能なことを確認済みのFRSとRCB機能を搭載しています。

お勧めの記事
(1) AV/ICTの新規格IEC 62368-1に準拠した保護回路の設計方法




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