車載用/産業用パワーコンバータ向けに堅牢な小型EMI制御を実装する方法
著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 氏
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-01-12
マルツ掲載日:2023-05-22
機器とユーザーの両方の安全を確保することは設計者にとって非常に重要であり、コンデンサは重要な役割を果たします。また、電気自動車(EV)の充電器、可変周波数ドライブ(VFD)の電磁干渉フィルタ、LEDドライバ、容量性電源やパワーコンバータなどの高エネルギー密度アプリケーションなどのシステムでは、部品のサイズ、重量、信頼性も重要です。
これらすべてのアプリケーションに共通する課題は、-40℃~+125℃で動作し、IEC 60384-14とAEC Q200の要件を満たし、THD(温度/湿度/バイアス)グレードIIIBの定格を持つ、ライン間用のコンパクトで堅牢な高電圧安全コンデンサX1、X2とライン対グランドEMIフィルタ用のY2コンデンサを調達することです。
これらの要件を満たすには、小型ポリプロピレンフィルムX1、X2、Y2 EMI抑制安全コンデンサを使用することができます。これらはIEC 60384-14の要件を満たし、AEC-Q200認定を受けており、過酷な環境条件下で高い信頼性と長寿命を必要とするアプリケーションに適した最高のIEC堅牢性分類を有しています。
これらの小型自己回復コンデンサは、従来のX1、X2、Y2安全コンデンサよりも大幅に小型化されており、プリント基板面積の縮小、軽量化、低コスト化が可能になります。
本稿では、まず安全コンデンサの回路アプリケーションと、IEC 60384-14とAEC-Q200のテスト要件と環境要件について説明します。次いで、X2ポリプロピレンフィルムコンデンサの並列構造と直列構造を比較します。
さらに、IEC 60384-14の要件を満たしてAEC-Q200準拠を認定された、Y2、X1アプリケーションとX2安全アプリケーションに適したKEMETの小型コンデンサの例を示します。また、これらのコンデンサのはんだ付けに関する推奨事項も記載しています。
安全コンデンサの役割
安全コンデンサには、安全に関する2つの機能があります。配電網に到達するノイズをフィルタリングして抑制し、雷やモータ転流、その他の原因によって引き起こされる電圧スパイクによる潜在的な損傷から装置を保護します。また、装置のユーザーを怪我から守るという機能もあります。安全コンデンサは、これら2つの機能によって分類されたり仕様分けされたりします。
ラインからニュートラルまでの差動モードEMIは、Xコンデンサによって処理されます。Yコンデンサはコモンモードの干渉を処理します(図1)。Xコンデンサが故障すると、火災が発生する恐れがあります。Yコンデンサが故障した場合は、ユーザーが感電する危険性があります。
Xコンデンサは、短絡状態で故障するとヒューズや回路ブレーカが作動し、電源電圧をシャットダウンすることで、火災を引き起こす危険を排除するように設計されています。Yコンデンサは開路状態で故障してユーザーを感電から守るように設計されているため、故障しても火災の危険は非常に低くなっています。
図1:Xコンデンサ(青)はライン間干渉によるEMIを、Yコンデンサ(オレンジ)はライン~グランド間干渉をそれぞれフィルタリングするように設計されています。(画像提供:KEMET)
EMIフィルタコンデンサは「X」「Y」として分類されるだけでなく、定格動作電圧や処理できるピークインパルス電圧によっても仕分けされます。Yコンデンサの場合は、さらに基礎絶縁か強化絶縁かで分類されます。これらのコンデンサに適用される規格としては、IEC 60384-14、UL 1414、UL 1283、CSA C22.2 No.1、CSA 384-14など多くの規格が策定されています。
IEC 60384-14では、Xコンデンサのサブクラスをインパルスピーク電圧によって、Yコンデンサを定格電圧と絶縁カテゴリによって定義しています。また、クラスごとに異なる形式の耐久テストを行うことが規定されています。X1、X2、Y2が最も多く使用されている安全コンデンサです(表1)。
Xコンデンサのサブクラス
・X3コンデンサ:ピーク電圧パルス定格が1.2kV以下のもの
・X2コンデンサ:ピーク電圧パルス定格が2.5kV以下のもの
・X1コンデンサ:ピーク電圧パルス定格が2.5kVを超えかつ4.0kV以下のもの
Yコンデンサのサブクラス
・Y4コンデンサ:定格電圧が150VAC未満のもの
・Y3コンデンサ:定格電圧が150~250VACのもの
・Y2コンデンサ:定格電圧が150~500VACで、基本絶縁のもの
・Y1コンデンサ:定格電圧が最大500VACで、二重絶縁のもの
表1:IEC 60384-14によるXコンデンサのピークインパルス電圧による分類と、Yコンデンサの定格電圧と絶縁タイプによる分類の例。(表データ提供:KEMET)
安全コンデンサの代替品
電圧定格と性能が異なるため、特定のタイプのXコンデンサとYコンデンサのみが、同等またはより高い電圧定格を持つ他のタイプの代替品として使用できます。たとえば、Y1コンデンサは同じ電圧定格を持ち、より高い絶縁定格を備えており、Y2コンデンサの代替品として使用できます。
Yコンデンサはフェイルオープン(故障時開)するように設計されているので、Xコンデンサの代わりに使用できます。ただし、Xコンデンサはフェイルショートするように設計されており、Yコンデンサの代わりにはなりません(表2)。XコンデンサはEMIを適切にフィルタリングできますが、Yコンデンサのライン対グランドの安全基準をサポートしていません。
表2:Xコンデンサの代替品になるYコンデンサはありますが、Yコンデンサの代替品になるXコンデンサはありません。(表データ提供:KEMET)
自己回復
自己回復とは、メタライズド(金属)コンデンサが絶縁破壊による瞬間的な短絡にさらされても、すぐに回復できる機能のことです。ポリプロピレンは、自己回復能力が最も優れた素材だと言われています。表面の酸素含有量が高いため、故障部周辺の電極材料が燃き払われます(除去されます)。故障部が除去されれば、静電容量の損失はわずかとなり、コンデンサの他の電気的特性は公称値にまで回復します。
自己回復のためには、ポリプロピレンフィルムの使用に加えて、金属の材質とその厚みが重要なファクタとなります。コンデンサは綿密に設計しておかないと、自己回復のための最適化によって極端な環境条件の影響を受けやすくなってしまう場合があります。綿密に設計しておけば、THBのような高いレベルの認定テストで認定されるのです。
THB認定
THB認定テストは、自動車、エネルギー産業、製造業用アプリケーションにおいて、部品の長期信頼性を評価するためによく使用されています。THBテストは、指定されたACまたはDCバイアス条件下で部品の劣化を規定期間の間加速させた後で、電気的パラメータを測定します。
IEC 60384-14、AMD1:2016では、THBグレードとしてI(AおよびB)、II(AおよびB)、III(AおよびB)の3つが規定されています(表3)。最高グレードのIIIBを満たす要件としては、85℃、RH 85%に1,000時間の暴露に耐える必要があります。このテストに合格するには、フィルムコンデンサは以下の性能を発揮できる必要があります。
・静電容量変化率 ≤10%以下
・定格が1μFを超えるコンデンサにおける1kHzでの散逸率の変化(∆tan δ) ≤150×10-4
・定格が1µF以下のコンデンサにおける10kHzでの散逸率の変化(∆tan δ) ≤240×10-4
・絶縁抵抗 ≥ 初期制限の50%、または200MΩ
表3:IEC 60384-14の最新版では、THBテストについて6つの選択肢を用意しています。(表データ提供:KEMET)
小型X2コンデンサ
X2コンデンサが必要な場合には、KEMETのR53Bシリーズ ラジアルポリプロピレンフィルムコンデンサを利用できます。これは、容量値が0.1~22μFで、UL 94 V-0の難燃性要件を満たす成形プラスチックケース内の自己消火性樹脂にカプセル封止されています(図2)。
これらの小型コンデンサは、リード間隔が15~37.5mmで、標準的なX2コンデンサに比べて平均60%の体積削減を実現しているので、ソリューションの小型軽量化を可能にします。これらのコンデンサは、AEC-Q200認定とIEC 60384-14 THBテストのクラスIIIB定格を取得しています。
たとえば、R53BI31505000Kは直流800V(VDC)および0.15μF±10%、R53BI322050S0Mは800VDCおよび0.22μF±20%の定格をそれぞれ有しています。
図2:R53B X2コンデンサは、UL規格の難燃性要件を満たす成形プラスチックケース内の自己消火性樹脂にカプセル封止されています。(画像提供:KEMET)
クラスX1/Y2の安全コンデンサ
KEMETのX1/Y2安全コンデンサシリーズR41Bは、容量0.0022~1.2μF、最大1,500VDCの電圧定格、±20%または±10%の公差のものが用意されています。R41Bは、R53Bと同様のパッケージで、リード間隔10~37.5mm、小型の体積、THB性能グレードIIIBを有しています。R41BF122050T0K(2200pF、1,500VDC)などのR41Bコンデンサは、125℃で2,000時間の動作定格を有しています。
R53BとR41Bの両安全コンデンサは、EV車載充電器、風力・太陽光発電用パワーコンバータ、VFDなどの産業用アプリケーションでの使用に適しているほか、SiCやGaNベースのパワーコンバータの設計での使用にも適しています。
はんだ付けの要件
メタライズドポリプロピレンフィルムの安全コンデンサは、電気的に堅牢で、かつ耐環境特性を有し、オペレータを高いレベルで保護することができますが、プリント基板にはんだ付けする際には特別な注意が必要です。ポリプロピレンの融点が160℃~170℃だからです。液相温度が183℃の従来の錫鉛(SnPb)はんだを使用する場合、これらのコンデンサをプリント基板に確実に取り付けるための簡単なテクニックがあります。
というのも、ポリプロピレンフィルムコンデンサのはんだ付けは、RoHS指令と部品の小型化が相まって複雑化しているからです。この指令では、錫銀銅(SnAgCu)または錫銅(SnCu)合金を使用するよう求めています。
これら新合金の一般的なはんだ付け温度は217℃から221℃のため、部品への熱ストレスが増加し、部品の劣化や永久的な損傷を引き起こす可能性があります。予熱や噴流はんだ付けの温度が高いと、小型のポリプロピレンフィルムコンデンサなどの小型部品にとっては有害な温度条件となります。
KEMETでは、ポリプロピレンフィルム安全コンデンサを使用する場合、IEC 61760-1 Edition 2の噴流はんだ付け曲線の通りに行うことを推奨しています(図3)。
図3:ポリプロピレンフィルム安全コンデンサのはんだ付け時の熱による損傷を防ぐため、KEMETではユーザーにIEC 61760-1 Edition 2の噴流はんだ付け曲線の通りに行うことを推奨しています。(画像提供:KEMET)
手動はんだ付けが必要な場合は、KEMETでは、はんだごての先端温度を350℃(最高+10℃)になるように設定することを推奨しています。手動はんだ付けは、部品の損傷を避けるため、3秒以内で行ってください。
スルーホールのポリプロピレンフィルムコンデンサには、一般的なリフローはんだ付けを行うことは推奨されていません。KEMETでは、これらのコンデンサを面実装部品の取り付けに使用される接着剤硬化オーブンに通さないよう注意しています。
コンデンサは、面実装部品の接着剤が硬化した後に、プリント基板に実装してください。スルーホール部品に接着剤硬化プロセスを施す必要がある場合、またはリフローはんだ付けが必要な場合は、使用可能なオーブン温度プロファイルの詳細を工場にお問い合わせください。
まとめ
設計者は、機器とユーザーの安全を確保しつつ、重要な設計要件を満たす必要があります。X、Y安全コンデンサは、機器を過剰なEMIから、またユーザーを危険から保護するために、使用されます。
堅牢で信頼性の高いKEMETのメタライズドポリプロピレンフィルムの小型安全コンデンサを使用することにより、IEC 60384-14のグレードIIIBのHTB要件とAEC-Q200を満たすことができます。これらのコンデンサは、産業用、EV用、WBG用など、様々なパワーコンバータアプリケーションにおけるソリューションの小型・軽量・低コスト化を実現します。
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