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IIoTにおけるインダストリ4.0データ処理を最適化するモジュール式オーバーレイネットワークの設計方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 
DigiKeyの北米担当編集者 の提供
2022-05-04

マルツ掲載日:2022-08-20


 インダストリ4.0と産業用IoT(IIoT)システムにおけるデータ処理の最適化は、状態監視、予知保全、総合設備効率(OEE)分析と追跡、診断、およびトラブルシューティングによって実現できます。

 よくある問題は、レガシー機器が接続されるように設計されていないか、あるいはさまざまな通信プロトコルを使用しているため、それらのプロトコルをすべて置き換えるのに高いコストがかかるということです。最大限の効果を保証し、実用的なマシンデータを得るには、多くの場合、既存のオートメーションの島やレガシー機器を接続できるオーバーレイネットワークを導入する方が簡単で費用対効果が高くなります。

 このようなオーバーレイネットワークを設計することは、困難な仕事です。そのためには、さまざまな通信プロトコルを使用するセンサなどの機器から信号を受信して、それらの信号を結合し、使用可能なデータストリームに統合して、そのストリームをエッジ計算リソースやクラウドにエクスポートできるコントローラが必要です。

 システムには、センサやインジケータなどの機器に直接接続できるアダプタが必要です。レガシー機器など、従来は互換性のなかったタイプの機器同士を接続するには、コンバータが必要です。

 また、コンバータの動作の信頼性を保証するために、電気的なノイズや過渡電流からデータ通信を保護するフィルタが必要です。これらの要素はすべて、産業環境で動作するためにIP65、IP67、IP68の環境規格を満たす必要があります。さらに、ソリューションの導入は簡単で費用対効果に優れている必要があります。

 本稿では、レガシー機器をIIoTに接続する際の問題点について簡単に説明します。その後で、Banner EngineeringのハードウェアおよびソフトウェアツールであるSnap Signalファミリのアーキテクチャを紹介するとともに、そのアーキテクチャがこれらの課題にどのように対処しているかも説明します。

 さらに、DXMR90コントローラ、関連するコンバータ、アダプタ、フィルタなどSnap Signal機器の例や、有線/無線のエッジ計算やクラウドへの接続を実装する際のアプリケーション上の考慮事項を示します。

レガシー機器とIIoTの接続

 多くの工場はIIoTやインダストリ4.0が登場する前から存在しているため、通常、すべての機器や機械を相互に接続して単一のネットワークにすることは不可能なので、オートメーションの島が形成されます。レガシー機器は、孤島になっていない場合でも、プロプライエタリの通信プロトコル、非標準のコネクタやケーブルの使用による非柔軟性のため、相互接続が困難な場合があります。

 Snap Signal IIoTオーバーレイネットワークは、互換性のないさまざまなデータ通信プロトコルをキャプチャして配布しやすい標準に変換し、エッジやクラウドの計算リソースに配信して分析・対処することにより、レガシー機器やオートメーションの島を迅速、柔軟、低コストで接続できます(図1を参照)。


図1:Snap Signalオーバーレイネットワークは、レガシー機器やオートメーションの島をエッジまたはクラウドの計算リソースと接続するためのモジュール式アーキテクチャです。(画像提供:Banner Engineering)

 柔軟性と信頼性の高いIIoTオーバーレイネットワークを導入するには、キーとなる要素がいくつか必要です。

アダプタ:配線経路を変更し、センサやインジケータなどの各種機器の配線方式を、オーバーレイネットワークで使用される標準的なフォーマットにリンクします。

データコンバータ:レガシー機器やオートメーションの島に見られるディスクリート/アナログフォーマットや各種デジタルフォーマットなど非互換のフォーマットをIO-LinkやModbusなどの標準プロトコルに変換し、パフォーマンスの集中監視を可能にします。

フィルタ:電気ノイズの多い産業環境においてデータを破損しないように保護することで、信号の完全性と信頼性を向上させ、トラブルシューティングの必要性を減らします。

プログラム可能コントローラ:複数のソースからのデータを統合し、ローカルでのデータ処理を提供するほか、レガシー機器やオートメーションの島をIIoTに統合するためのコネクティビティを実現します。

有線または無線接続:収集したデータをエッジの計算リソースや、BannerのCloud Data Service(CDS)などのクラウドに配信します(CDSは、データの可視化を実現したり、機械の性能に関する分析を提供します)。また、機械の操作、メンテナンス、修理をリアルタイムでサポートするための電子メールやテキストアラートを送信します(図2)。


図2:統合されたデータは、有線または無線接続によりエッジの計算リソースやBannerのCDS(上のスクリーンショット)などのクラウドに送信することができます。(画像提供:Banner Engineering)

複数のデータストリームを統合するコントローラ

 プログラム可能コントローラとデータコンバータは、オーバーレイネットワークを設計する上で重要な要素です。BannerのDXMR90 産業用コントローラは、中央通信ハブとして機能し、複数のModbusポートからの信号を統合されたデータストリームに結合して転送します。たとえば、モデルDXMR90-X1は4つのModbusマスタを搭載し、最大4つのシリアルネットワークとの同時通信をサポートします(図3)。

 
図3:DXMR90のポートには、設定可能なModbusポート0(左)、Modbusマスターポート(下の1~4)、RS-485と受電用のModbusポート0/PW(右上)、DコードEthernetポート(右下)があります。(画像提供:Banner Engineering)

 DXMR90は、高度に統合された通信コントローラであり、以下の特長を備えています。

・Modbus TCP/IP、Ethernet I/P、Profinetで使用できるようにModbus RTUを変換することで、さまざまなModbus機器を使用できる機能

・スレーブ機器に手動でアドレスを割り当てなくても、それらの機器を接続できる、4つの独立したModbusマスターポート

・ローカルでのデータ管理と以下とのコネクティビティ
   ・Modbus/TCP、Modbus RTU、Ethernet/IP、Profinet、オートメーションプロトコル
   ・RESTful APIやMQTTなどのインターネットプロトコルとAWSのウェブサービスなど
   ・ダイレクト電子メールでの警告通知

・MicroPythonやScriptBasicでプログラム可能な、あらかじめ定義されたアクションルールを持つ内部ロジックコントローラ

・産業環境に簡単に導入できる、IP65、IP67、IP68準拠のハウジング

・ユーザープログラム可能LEDによる手軽なステータス表示

・BannerのCDSなどのデータベースへの接続に使用できる、有線Ethernetケーブルやセルラー対応のDXMコントローラ

IIoTネットワークで機器をつなぐコンバータ

 レガシー機器やオートメーションの島をオーバーレイネットワークに融合させるには、効率的なデータ変換が必要です。この機能を実現するBannerの小さなプラグオン型インラインコンバータS15Cシリーズを使用すれば、さまざまなフォーマットの状態監視/プロセスセンサデータをデジタルIO-Linkデータに変換できます(図4)。

 たとえば、S15C-MGN-KQは、ModbusマスターからIO-Link機器へのコンバータであり、最大60個のレジスタを読み込んで15個までのレジスタに書き込めるようにユーザーによって設定可能で、設定済みのModbusレジスタが自動的にIO-Link経由で送信されます。


図4:S15Cシリーズ インラインデータコンバータは、ディスクリート、アナログなどさまざまなタイプの信号をModbus、IO-Link、PWM、PFMなどの産業用プロトコルに変換することができます。(画像提供:Banner Engineering)

 S15Cコンバータは、直径が15mmで、IP68のオーバーモールドハウジングに収納され、M12接続を備えており、接続先機器と同じ電源を使用します。S15Cコンバータは、Modbusリンクの終端、IO-Linkマスタの近くに設置できるため、20mというIO-Link通信の限界がなくなります。

 S15Cは、以下の8機種のコンバータをラインアップしています。

・超音波、測定用光カーテン、温度/湿度、振動/温度、GPSなどを検出するBannerのModbusセンサラインアップで使用できる6機種のModbus/IO-Linkコンバータ。この他にも、ほとんどのModbus機器をIO-Link機器として展開できるように設定可能な汎用コンバータもあります。

・DC0~10Vまたは4~20mAの信号をデジタル値に変換し、IO-Linkデータとして転送する2機種のアナログセンサ。

配線アダプタ/フィルタでネットワークが完成

 柔軟で費用対効果の高いオーバーレイネットワークを迅速に構築するためには、コントローラやデータコンバータだけでなく、配線アダプタ/ノイズフィルタが必要です。S15A-F14325-M14325-Qなどのインライン配線アダプタは、センサやインジケータなどの機器に直接接続し、各アプリケーション要件に応じて配線の方向を変えたり信号を絶縁することができます(図5)。これらの配線アダプタには、標準構成とカスタム構成があります。

   
図5:S15A-F14325-M14325-QなどのS15Aアダプタは、設置を簡単にするためM12接続を使用しており、各アプリケーション要件に合わせて配線を変更することができます。(画像提供:Banner Engineering)

 S15F-L-4000-QなどのS15Fインラインフィルタも、オーバーレイネットワークにおける重要な要素です(図6)。これらのフィルタは、ネットワーク性能に悪影響を及ぼす電気ノイズや過渡電圧の問題を簡単に解決することができます。S15AアダプタやS15Cコンバータと同様に、これらのフィルタもM12接続を使用しており、IP65、IP67、IP68規格に適合したオーバーモールド構成でパッケージングされています。S15Fインラインフィルタを設置することで、信号の完全性が向上し、ネットワークのトラブルシューティングの必要性が減ります。

  
図6:S15F-L-4000-QなどのS15Fインラインフィルタは、M12接続によりネットワーク上の必要な場所に簡単に設置でき、電気ノイズや過渡現象から機器を保護するためにすぐに使用できます。(画像提供:Banner Engineering)

Snap Signalネットワークの設計と導入

 Snap Signalのオーバーレイネットワークの設計と導入は、監視するデータソースを特定することから始まります。次に、既存の機器を補完するために、新たにセンサやインジケータを追加するかどうかを判断する必要があります。Snap Signalネットワークの設計手順は、以下のとおりです。

・Bannerのシステムダイアグラムアプローチにより、個別の設置に必要なSnap Signal要素を洗い出し、選定します。

・監視対象機器とDXMR90コントローラ間のTコネクタやフィルタの配置など、最適な配線経路を計画します。

・ローカルでデータを利用するために有線Ethernet接続を使用するか、あるいはクラウドプラットフォームに無線接続するためにエッジゲートウェイ機器を使用するかを決定します。

 Snap Signalは真のオーバーレイネットワークであり、既存のハードウェアを交換する必要はありません。モジュール式でプラグアンドプレイのSnap Signalアーキテクチャは、簡単に設置することができます。

・新しいセンサやその他の機器を設置し、監視するすべての機器にスプリッタケーブルを追加することで、マシンコントロールとの既存の接続を維持しながら、オーバーレイネットワークへの第2の経路を作成します。

・必要なインライン信号コンバータを設置します。

・T型コネクタやフィルタ、およびその他の必要なネットワーク配線を追加し、ネットワークを完成させてDXMR90コントローラに接続します。

・ScriptBasicやMicroPythonプログラミング、組み込みのアクションルールを使って、カスタムセンシングや制御シーケンスを作成するようにDXMR90をプログラムすることができます。

・Ethernet接続を使って、DXMR90をエッジの計算リソースに接続します。または、セルラー対応のDXMコントローラを使って、DXMR90をクラウドに接続します。

まとめ

 オーバーレイIIoTネットワークは、アクションに直結するデータの収集を可能にすることで、既存の工場すべての生産性向上を実現し、レガシー機器やオートメーションの島を産業用ネットワークに接続しなければならない設計者のニーズに対応します。このようなオーバーレイネットワークを設計・実装することは面倒ですが、これまで説明してきたように、Banner EngineeringのトポロジとSnap Signalラインナップを使用すれば、大幅に簡素化することが可能です。

 このラインナップには、DXMR90 産業用コントローラ、データコンバータ、配線アダプタ、フィルタなど、IIoTオーバーレイネットワークを実装し、エッジの計算リソースやクラウドに配布するために必要な要素が揃っています。Snap Signalネットワークアーキテクチャは、プログラム可能でモジュール式の柔軟な設計により、新しい機器の追加をサポートし、インストールを将来の使用にも堪えられるようにします。

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