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医療用アプリケーション向けにコネクタを指定する際の5つの考慮事項

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 
DigiKeyの北米担当編集者 の提供
2022-06-22

マルツ掲載日:2022-10-31


 医療機器や医療システムの設計者は、複雑化・小型化する形状に対応するのに役立つと同時に、さまざまなモデルで高い信頼性と性能を保証するコネクタを必要としています。

 一部のコネクタは、システム内で使用されていて直接アクセスできないため、信頼性が重要になります。その他のコネクタは、外科医、内科医、看護師、技師などが日常的に使用するため、使いやすさや嵌合サイクルの多さも重要になります。

 医療機器や医療システム用のコネクタは、アプリケーションに応じてIEC60601、ISO80369-1、ISO13485などの規格に準拠する必要があり、一般的な業界標準や仕様以上の厳しい環境試験が求められることもあります。

 設計者は、使用可能なモデルや特定の規格とともに、パルス振幅変調2レベル(PAM2)と呼ばれる非ゼロ復帰(NRZ)とパルス振幅変調4レベル(PAM4)コネクタ技術の間の技術的トレードオフを考慮し、特定のユースケースに対して最適なコストと性能を実現する必要があります。

 設計者は、最適なソリューションを特定するために、幅広い種類のコネクタを検討する必要があります。そのプロセスを支援するため、この記事では、まず医療機器用コネクタを指定する際に留意すべき5つの重要な要素について簡単に説明します。その後、Samtecが提供するコネクタオプションの例を紹介します。そして最後に、高速システムにコネクタを統合する際のアプリケーションの考慮事項を概観します。

NRZとPAM4の比較

 NRZは、1信号区間に1ビットの情報を伝送します。PAM4は、1区間に2ビットのスループットを備えたマルチレベル信号変調方式です。NRZアイでは、上が「1」、下が「0」を表します。一方、PAM4信号は、00、01、10、11という4つの電圧レベルを使用して形成された3つの積層アイで構成されます(図1)。

 アイの高さは重要な考慮事項です。NRZ信号のアイが高いほど、信号品質が向上します。PAM4と比較すると、NRZは実装が簡単で、反射が少なく、信号対雑音比(SNR)が良く、コストも低くなります。しかし、PAM4は本質的に高速であり、マルチギガビット通信などの高速リンクで使用されます。


図1:NRZは1つのアイを持ち(左)、1信号区間に1ビットの情報を伝送します。PAM4は、3つのアイを持ち(右)、1区間に2ビットのスループットを備えたマルチレベル信号変調方式です。(画像提供:Samtec)

機械的考慮事項

 コネクタを選択する際の機械的な考慮事項には、コンタクトピッチ、嵌合タイプ、終端スタイル、およびサイズが含まれます(図2)。ピッチは、コンタクトの中心から中心までの間隔を測定します。この数字は1つとは限りません。各列のコンタクト間のピッチと列間のピッチが同じ場合もあれば、異なる場合もあるからです。

 プリント回路基板上のコネクタは、水平、垂直、直角の嵌合を使用できます。もう1つの考慮事項は、コネクタの取り外しのしやすさを測る保持力です。


図2:入手可能なコンタクトピッチ、終端、サイズのバリエーションの一部(画像提供:Samtec)

 一般的な終端スタイルは、スルーホール、面実装、ペーストインホール、プレスフィットなどです。スルーホールコンタクトは、プリント基板にあけた穴を通過し、各プリント基板層の間を強力に接続します。

 面実装コネクタは、プリント基板の表面に実装するため、穴をあける必要がありません。スルーホールコネクタに比べ、ピッチ間隔を小さくすることが可能です。スルーホール終端は、ますます多くのアプリケーションで面実装終端へと置き換えられています。

 ペーストインホールコネクタは、プリント基板を完全に貫通しない穴に実装します。面実装またはペーストインホールの設計に使用するには、コネクタ本体の材質がはんだリフロー温度に耐えられることと、リードの周囲に水平および垂直のクリアランスを設けて必要な量のはんだペーストに対応できることが必要になります。

 プレスフィット終端は、はんだ不要で低コストですが、取り付けには特殊な工具が必要です。これらの終端は、プリント基板の穴に押し込まれ、圧縮力で固定されます。あまり一般的でない終端スタイルには、ランドグリッドアレイ、ボールグリッドアレイ、ワイヤラッピング、圧着、ネジ終端などがあります。

使いやすさ

 コネクタを定期的に嵌脱するアプリケーションでは、接触抵抗、嵌合サイクル、嵌合/抜去力などがコネクタの使いやすさに影響します。接触抵抗が低いほど、コネクタによって失われる電力は少なくなります。電気的要件を満たすのに十分なほど接触抵抗が低ければ、低い嵌合/抜去力でも使いやすさに貢献できます。

 コネクタの嵌合/抜去サイクルの仕様は、数十サイクルから数千サイクルまでと制限されています。コネクタのサイクル寿命は、アプリケーションのニーズに合わせる必要があります。

 コネクタコンタクトを嵌合させると、コンタクトが変位し、金属が屈曲します。この屈曲が重要であり、コネクタの嵌脱に必要な力や、接触抵抗を決定付けます。また、屈曲によってコンタクトに応力が生じるため、時間とともに嵌合/抜去力が低下したり、接触抵抗が増加したりします。

 コネクタコンタクトによく使用される真鍮の母材を、より高価なリン青銅に置き換えると、サイクル寿命が延びます。リン青銅は真鍮よりも弾性が高く、青銅コンタクトのサイクル寿命を制限する応力の影響を受けにくくなります。

IEC60601、ISO80369-1、ISO13485

 さまざまな医療システムや医療機器に対し、アプリケーション特有の業界標準が数多く存在します。すべての設計において考慮する必要がある、より一般的な標準として、以下の3つが挙げられます。

・ISO80369-1は、医療機器間、または異なるアプリケーションのアクセサリ間の誤接続のリスクを低減するための設計手法に焦点を当てています。

・IEC60601は、基本的な安全性および、電磁妨害(EMI)や電磁両立性(EMC)を含む基本性能に関する一般要求事項に焦点を当てています。

・ISO13485は、製造プロセスで使用する部品や工程を追跡するために必要な品質システムに焦点を当てています。これは、ISO-9001に関連しています。

業界標準を超えた試験

 過酷環境試験(SET)は、一般的な業界標準や仕様の枠を超える、Samtecが開発した一連の試験で、次の内容が含まれます。

・湿度100%で250回の嵌合サイクル
・低レベル接触抵抗(LLCR)とイベント検出に基づく激しい衝撃と振動
  標準重力(g)の40倍のピーク、11ms、ハーフサイン、12gのRMS、5~2000Hz、1時間/軸を使用したLLCR試験
  LLCR試験と同じ試験手順を用いるEIA-364-87、EIA-364-27、EIA-364-28に準拠したイベント検出
・500回の温度サイクル
・非動作クラスの温度試験:
  コネクタに対してLLCR試験を実施し、-55~105℃に100サイクル暴露してから、再度LLCR試験を実施。
  -65~125℃に100サイクル暴露してから、再度LLCR試験を実施。
  LLCRに合格するには、コネクタの変化を5mΩ以下に維持する必要があります。
・高度70,000フィートでの絶縁耐圧
・静電気放電(ESD)試験は通常、コネクタでは実施されませんが、SETに含まれています。

10,000回の嵌合サイクルに対応するコネクタ

 最大10,000回の嵌合サイクルを必要とする設計者は、SamtecのTiger Eye相互接続システムの製品であるTFMおよびSFMシリーズを利用することができます。これらのコネクタは、微細で頑丈、高信頼性、高サイクルのアプリケーション向けに設計されており、0.80、1.27、2.00mmという3種類のピッチで提供されます。

 また、高サイクルアプリケーション向けに最適化された熱処理済みベリリウム銅(BeCu)マルチフィンガーコンタクトを備え、厳しい環境向けに設計されています(図3)。たとえば、TFM-105-01-S-D-Aは、1.27mmピッチのコンタクトを備えた10ポジションヘッダです。


図3: Tiger Eye相互接続システム(左)は、さまざまなフォーマットとサイズで入手でき、10,000回以上の嵌合サイクルに耐える堅牢なコンタクトシステムを提供します。TFM-105-01-S-D-A(右)は、1.27mmピッチのコンタクトを備えた10ポジションヘッダです。(画像提供:Samtec)

 滑らかなコンタクト嵌合面は、メッキにストレスを与えないため、接触抵抗の低減、メッキ寿命の延長、サイクル寿命の向上を実現します。テール部の微細な溝にはんだが入り込みやすいため、はんだ接合強度が向上します。これらのコネクタは、適切な嵌合を保証するために極性化されています。また、オプションのフリクションロックにより、接続の安全性が向上します。

高密度・高速コネクタ

 高速・高密度を必要とするアプリケーションには、SamtecのSEARAY 1.27mmオープンピンフィールドプレスフィットアレイを使用することができます。これらのコネクタは、信号の完全性を実現するために最適化された最大500個のコンタクトを備え、垂直または直角の取り付けオプションが用意されています(図4)。

 このシステムは、最大10列、1列あたり50コンタクトで接地と配線の柔軟性を実現し、7mm、8mm、8.5mm、9.5mmのスタック高さを選択でき、最大28Gビット/秒の信号に対応します。たとえば、品番SEAFP-40-05.0-S-06は、垂直マウント設計で、240個のコンタクトとスルーホール終端を備えています。


図4:SEARAY 1.27mm高密度オープンピンフィールドプレスフィットアレイは、垂直および直角(上)のオプションで利用可能です。(画像提供:Samtec)

PAM4またはNRZ用コネクタ

 より高いコンタクト密度と28Gビット/秒以上の速度を必要とするアプリケーションには、56Gビット/秒のSEARAYシリーズを使用することができます。0.8mmピッチは1.27mmピッチのコネクタの2倍のコンタクト密度を持ち、高さ7mmと10mmのスタックがあり、PAM4またはNRZ通信に対応します。最大12列60コンタクト、合計720コンタクトの構成が可能です。

 これらのオープンピンフィールドアレイは、差動信号ペア、シングルエンド信号伝送、電力供給など、接地と配線の柔軟性を最大限に高めます(図5)。品番SEAF8-20-05.0-S-04-2-Kには、80金メッキのコンタクトと面実装終端を採用しています。また、これらのコネクタはSET認定されています。


図5:SEARAY高密度オープンピンフィールドアレイは、差動信号ペア、シングルエンド信号伝送、電力供給など、接地と配線の柔軟性を最大限に高めます。(画像提供:Samtec)

高速コネクタアプリケーションの考慮事項

 医療用アプリケーションに高速コネクタを使用する場合、信号の完全性と電磁妨害(EMI)に関連して設計者が考慮しなければならない要因が多くあります。これらの考慮事項には、以下が含まれます。

・短いほうが優れている。
 コネクタを短くすることで、より優れた信号品質を実現できます。コネクタが短ければ短いほど、反射やクロストークが発生する時間は短くなります。

・信号とグランドの比率が重要。
 多くの場合、1:1の比率が最適ですが、ピン数の多いコネクタでは、信頼性の高い高速シングルエンド動作を実現するために1:1未満の比率が必要な場合もあります。

・2.5Gビット/秒以上の信号を伝送する差動コネクタには、コンタクトペアのグランドシールドを推奨。

・複数のコネクタを備えたプリント基板では、ミスアライメントが重大な問題になることがある。
 メーカーの推奨する終端接続の仕様に忠実に従い、アライメントピンホールの直径公差を±0.002インチ(0.05mm)に抑えてください。

・電磁妨害(EMI)はプリント基板だけの問題ではない。
 基板間コネクタはEMIの懸念材料となる可能性があるため、全体設計の一部として最初から考慮する必要があります。

まとめ

 医療システム用コネクタの選定は、重要かつ複雑な作業です。コネクタは、電気的仕様および、NRZやPAM4などの通信プロトコルへの対応に加え、機械的耐久性、信頼性、使いやすさなどの要件を満たすために最適化する必要があります。

 関連する業界標準を遵守することは重要ですが、医療機器や医療システムのコネクタに期待される高レベルの性能を確保するためには、多くの場合、ここで紹介したSamtec製デバイスのように、業界標準を超えた試験が必要になることがあります。

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