マルツTOP > APPLICATION LAB TOPページ おすすめ技術記事アーカイブス > リアルタイム制御のために高速、高精度、低電力の位置センシングを実現する方法

リアルタイム制御のために高速、高精度、低電力の位置センシングを実現する方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 
DigiKeyの北米担当編集者 の提供
2021-04-04

マルツ掲載日:2022-06-13


 産業用ロボットや自動化システムからロボット掃除機、セキュリティに至るまで、さまざまなインダストリー4.0アプリケーションにおいて、リアルタイム制御のための3次元(3D)位置センシングの利用が拡大しています。

 3Dホール効果位置センサは、高い再現性と信頼性を提供し、窓、ドア、エンクロージャの侵入検出や磁気不正変更検出にも使用できるため、これらのアプリケーションにとって優れた選択肢になります。

 それでも、ホール効果センサを用いた効果的で安全な3Dセンシングシステムを設計するには、複雑で時間のかかる作業となる場合があります。ホール効果センサは、角度計算エンジンとして機能し、測定値の平均化や、磁石の方向と3D位置を決定するためのゲインとオフセット補正を実行するために、強力なマイクロコントローラ(MCU)とのインターフェースを必要とします。

 また、MCUは、磁界、システム温度、通信、連続性、内部信号経路、電源の監視など、さまざまな診断に対応する必要もあります。ハードウェアの設計に加え、ソフトウェアの開発も複雑で時間がかかるため、市場投入までの時間がさらに遅れる可能性があります。

 これらの課題に対処するため、設計者は計算エンジンを内蔵した統合型ホール効果3D位置センサICを使用することができます。これらのICにより、ソフトウェア設計を簡素化し、システムプロセッサの負荷を最大25%低減できるため、低価格の汎用MCUを使用することが可能となります。また、高速サンプルレートと低レイテンシも提供し、正確なリアルタイム制御を実現できます。

 バッテリ駆動デバイスでは、3Dホール効果位置センサを5Hz以下のデューティサイクルで動作させ、消費電力を最小限に抑えることができます。さらに、統合された各機能と診断により、設計の柔軟性やシステムの安全性と信頼性を最大限に高めることができます。

 この記事では、3Dホール効果位置センサの基礎を概説し、ロボティクス、不正変更検出、ヒューマンインターフェース制御、ジンバルモータシステムなどでの利用について解説します。その後、Texas Instrumentsの高精度なリニア3Dホール効果位置センサの例と、関連する評価ボードや開発プロセスを加速するための実装ガイダンスを紹介します。

3Dホール効果センサとは?

 3Dホール効果センサは、完全な磁場に関する情報を収集できるため、距離と角度の測定値を使用して3D環境での位置の決定が可能になります。これらのセンサの配置は、軸上および、磁気分極を備えた同一平面上の2つが最も一般的です(図1)。

 分極の軸上に配置された場合、磁界は位置決定に使用可能なセンサに一方向の入力を提供します。同一平面上の配置では、センサまでの距離にかかわらず、磁石面に平行な磁場ベクトルが得られるため、位置や角度の決定も可能になります。


図1: 3Dホール効果位置センサは、距離と角度の動きを測定するために、磁場の軸上または同一平面上に配置できます。(画像提供:Texas Instruments)

 ロボットなどのインダストリー4.0システムでは、ロボティックアームの角度や移動ロボットの各車輪の角度を測定し、施設内のナビゲーションや正確な動きをサポートする多軸モーションセンシングが必要になります。これらのタスクには、湿気や汚れに強い統合型3Dホール効果センサがよく適しています。同一平面上の測定により、回転軸の磁界測定を高精度で行うことができます(図2)。


図2:統合型3Dホール効果センサは、ロボットなどのインダストリー4.0アプリケーションでシャフトの回転を測定できます。(画像提供:Texas Instruments)

 電気やガスのメータ、現金自動預払機(ATM)、企業向けサーバ、電子販売時点管理機器などの保護エンクロージャは、軸上の磁界測定を用いて侵入を検出できます(図3)。ケースを開けると、3Dホール効果センサが感知した磁束密度(B)が減少し、ホールスイッチの磁束解放点(BRP)の仕様値を下回ると、センサがアラートを発します。

 ケースを閉じるときは、誤ったアラートを防ぐために、磁束密度をBRPに対して十分に大きくする必要があります。磁石の磁束密度は温度が上がると減少する傾向があるため、温度補償機能を備えた3Dホール効果センサを使用することにより、産業用や屋外環境で使用するエンクロージャのシステム信頼性を向上できます。


図3:3Dホール効果センサを用いて実装可能なエンクロージャ不正変更検出により、不正アクセスを特定できます。(画像提供:Texas Instruments)

 家電製品、テスト/測定機器、パーソナルエレクトロニクスなどのヒューマンインターフェースや制御は、3軸すべてのモーションを使用することで恩恵を受けられます。センサはX、Y平面上のモーションを監視してダイヤルの回転を識別し、X、Y磁気軸の大きなシフトを監視することにより、ダイヤルが押されたことを識別できます。Z軸の監視により、システムはミスアライメントを特定し、予防保守が必要となる可能性のあるダイヤルの摩耗や損傷に対してアラートを送信できます。

 携帯型カメラスタビライザやドローンのジンバルモータシステムは、磁界感度範囲を選択できる3Dホール効果センサやプログラム可能なその他のパラメータを使用して、角度測定値をMCUに提供することで恩恵を受けています(図4)。

 MCUは、プラットフォームを安定させるために、必要に応じてモータの位置を継続的に調整します。軸上と軸外で正確かつ高精度に角度を測定できるセンサは、機械設計に柔軟性をもたらします。


図4:携帯型カメラプラットフォームやドローンに使用されるジンバルモータは、磁界の感度範囲を選択できる3Dホール効果センサの恩恵を受けています。(画像提供:Texas Instruments)

 面外測定では、軸によって磁界の強さ(ゲイン)やオフセットが異なる場合が多く、角度計算の誤差の原因となることがあります。また、ゲイン/オフセット補正を備えた3Dホールセンサを使用することで、磁石に応じてセンサの配置を柔軟に変更でき、最高精度の角度計算を実現します。

柔軟性の高い3Dホール効果センサ

 Texas Instrumentsは、10MHzのシリアルペリフェラルインターフェース(SPI)と巡回冗長検査(CRC)を備えた高精度3Dリニアホール効果センサのTMAG5170ファミリや、I²CインターフェースとCRCを備えた低電力リニア3Dホール効果センサのTMAG5273ファミリを含む、3軸リニアホール効果センサを提供しています。

 TMAG5170デバイスは、高速かつ高精度の位置センシングを実現するために最適化されており、±2.6%のリニア測定総誤差(25℃で最大)、±2.8%の感度温度ドリフト(最大)、単一軸で20キロサンプル/秒(Ksps)の変換速度を備えています。

 TMAG7273デバイスは、低電力モードを特長とし、2.3mAのアクティブモード電流、1μAのウェイクアップ電流とスリープモード電流、5nAのスリープモード電流を備えています。これらのICには、4つの主要機能ブロックがあります(図5)。

 電源管理と発振器ブロックには、不足電圧/過電圧検出、バイアス、発振器が含まれます。センシングと温度測定ブロックは、ホールセンサや、マルチプレクサ、ノイズフィルタ、温度センシング、積分回路、A/Dコンバータ(ADC)との関連バイアスなどで構成されています。

 インターフェースブロックには、通信制御回路、静電気放電(ESD)保護、入力/出力(I/O)機能、CRCが含まれます。デジタルコアには、必須およびユーザーによる診断チェックのための診断回路、その他のハウスキーピング機能、軸上と軸外の角度測定に対して360°の角度位置情報を提供する統合型角度計算エンジンが含まれます。


図5:TMAG5170モデルのSPIインターフェース(上記)とTMAG5273モデルのI²Cインターフェースを除き、内部機能ブロックは両ファミリの3Dホール効果センサICで共通となっています。(画像提供:Texas Instruments)

 TMAG5170デバイスは、3.00×3.00mmの8ピンVSSOPパッケージで提供され、-40℃~+150°Cの周囲温度範囲で仕様規定されています。TMAG5170A1の感度範囲は、±25ミリテスラ(mT)、±50mT、±100mTです。一方、TMAG5170A2は、±75mT、±150mT、±300mTに対応します。

 低電力のTMAG5273ファミリは、2.90×1.60mmの6ピンDBVパッケージを使用し、-40℃~+125°Cの周囲温度範囲で仕様が規定されています。こちらも、感度範囲が±40mTと±80mTのTMAG5273A1と、±133mTと±266mTに対応するTMAG5273A2という2種類のモデルで提供されています。

 ユーザーが選択した2つの磁気軸を使用して、角度の計算を行います。システムの機械的な誤差原因の影響は、磁気ゲインやオフセットの補正によって最小限に抑えられます。また、オンボード温度補償機能を使用して、磁石やセンサの温度変化を個別に補償できます。

 これらの3Dホール効果センサは、通信インターフェースを通じて構成でき、磁気軸と温度測定の組み合わせをユーザー制御で実現します。TMAG5170のALERTピン、またはTMAG5273のINTピンは、MCUが新しいセンサ変換を開始するために使用できます。

評価ボードによる作業開始時の支援

 Texas Instrumentsは、基本的な機能評価ができるように、TMAG5170シリーズ用とTMAG5273シリーズ用に2種類の評価ボードも提供しています(図6)。TMAG5170UEVMは、TMAG5170A1とTMAG5170A2の両モデルを切り離し可能なプリント基板に搭載しています。TMAG5273EVMは、TMAG5273A1とTMAG5273A2モデルを切り離し可能なプリント基板に搭載しています。

 これらの評価ボードには、測定値の表示や保存、レジスタの読み書きなどを行うグラフィックユーザーインターフェース(GUI)とインターフェース接続するセンサ制御基板が含まれます。3Dプリントで作成された回転/プッシュモジュールは、角度測定の一般的な機能をテストするために使用します。


図6:TMAG5170EVMとTMAG5273EVMにはいずれも、2種類の3Dホール効果センサICを搭載した切り離し可能な基板(右下)、センサ制御基板(左下)、3Dプリントで作成された回転/プッシュモジュール(中央)、電源用USBケーブルが同梱されています。(画像提供:Texas Instruments)

   
図7:EVMの上に実装されている3Dプリント作成の回転/プッシュモジュールのイラスト。(画像提供:Texas Instruments)

3Dホールセンサの使用

 これらの3Dホール効果位置センサを使用する際には、設計者が注意すべき実装の考慮事項がいくつかあります。

 TMAG5170の結果レジスタのSPI読み出し、またはTMAG5273のI²C読み出しは、正しいデータを読み出すために、変換更新時間と同期させる必要があります。TMAG5170のALERT信号やTMAG5273のINT信号を使用することで、変換が完了してデータの準備ができたときにコントローラに通知できます。

 低インダクタンスのデカップリングコンデンサをセンサピンの近くに配置する必要があります。セラミックコンデンサは、0.01μF以上の値のものが推奨されます。
これらのホール効果センサは、プラスチックやアルミなどの非鉄材料製のエンクロージャ内に埋め込むことができ、センシング磁石は外側に配置されます。また、センサと磁石をプリント基板の反対側に配置することも可能です。

まとめ

 3Dモーションと制御の発展に伴い、設計者はリアルタイムで正確な測定を行い、シンプルな設計でコストを抑えつつ、消費電力も最小限に抑える必要があります。

 この記事で説明したように、TMAG5170とTMAG5273の統合型3Dホール効果センサは、これらの問題に対処し、正確なリアルタイム制御のための高速サンプルレートと低レイテンシ、またはバッテリ駆動デバイスの消費電力を最小限に抑えるための低サンプルレートという柔軟性をもたらします。

 ゲインとオフセットの補正アルゴリズムおよび、磁石とセンサの独立した温度補正を組み合わせることで、高い精度を確保しているのです。

お勧めの記事
(1) 近接センサの基礎知識:産業用オートメーションにおけるその選択と使用
(2) 複数のデバイス間の接続を簡素化するためにシリアルペリフェラルインターフェースを使用する理由と方法




免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKey Electronicsの意見、信念および視点またはDigiKey Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

 

このページのコンテンツはDigiKey社より提供されています。
英文でのオリジナルのコンテンツはDigiKeyサイトでご確認いただけます。


DigiKey社の全製品は 1個からマルツオンラインで購入できます

※製品カテゴリー総一覧はこちら



ODM、OEM、EMSで定期購入や量産をご検討のお客様へ【価格交渉OK】

毎月一定額をご購入予定のお客様や量産部品としてご検討されているお客様には、マルツ特別価格にてDigiKey社製品を供給いたします。
条件に応じて、マルツオンライン表示価格よりもお安い価格をご提示できる場合がございます。
是非一度、マルツエレックにお見積もりをご用命ください。


ページトップへ