ファクトリオートメーション、5G、IoTのための降圧コンバータの迅速な実装方法
著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏
DigiKeyの北米担当編集者 の提供
2022-05-24
マルツ掲載日:2022-09-05
降圧DC/DCコンバータは、5G基地局、ファクトリオートメーション(FA)装置、IoTデバイスなどの多くの電子システムに広く使用され、高電圧を効率的に降圧変換することができます。たとえば、バッテリや配電バスからの12V直流(VDC)や48VDCなどの電圧は、多くの場合、デジタルIC、アナログセンサ、無線周波数(RF)セクション、インターフェースデバイスに電力供給する際に、より低い電圧に変換する必要があります。
設計者はディスクリート降圧コンバータを実装し、それを性能特性や基板レイアウトの面で特定の設計に最適化することができますが、このアプローチの採用には課題があります。たとえば、適切なパワーMOSFETの選択、フィードバックと制御ネットワークの設計、インダクタの設計、非同期整流式トポロジまたは同期整流式トポロジの選択などです。
また、この設計では、多くの保護機能を搭載し、最大効率と小型ソリューションサイズを実現する必要があります。同時に、設計者は設計期間の短縮とコスト削減を迫られており、より適切な電源コンバータの代替品を見つける必要があります。
ディスクリート方式の代わりとなるのが統合型電源ICです。MOSFETと必要なフィードバック回路や制御回路を組み合わせた統合型電源用ICは、すでに高効率の降圧コンバータ向けに最適化されているので、設計者にとって有力な選択肢になります。
この記事では、非同期整流式と同期整流式の降圧DC/DCコンバータの性能のトレードオフと、それらが特定のアプリケーションのニーズにどのように関係するかを考察します。また、ROHM Semiconductorの統合型非同期整流式降圧ICと同期整流式降圧コンバータICソリューションの例を紹介し、出力インダクタやコンデンサの選択、プリント基板のレイアウトを含む実装上の注意点を解説します。設計者が開始しやすいように、評価ボードの説明も行います。
降圧コンバータを使用する理由
数アンペア(A)の電流を必要とするアプリケーションでは、リニアレギュレータに代えて降圧コンバータを使用することで、より高い効率性を得られます。リニアレギュレータの効率はおそらく約60%ですが、非同期整流式降圧コンバータの効率は85%以上になります。
基本的な非同期整流式降圧コンバータは、MOSFETスイッチ(S1)、ショットキーダイオード(D1)、コンデンサ(C1)、インダクタ(L1)、MOSFETをオン/オフするコントローラ/ドライバ回路(表示なし)で構成されています(図1)。降圧コンバータは、DC入力電圧(VIN)を受けてパルス状のAC電流に変換し、ダイオードで整流した後、インダクタとコンデンサでフィルタリングして、安定化されたDC出力電圧(VO)を生成します。このトポロジは、インダクタにかかる電圧が入力電圧に対抗する、つまり「降圧」することからその名が付けられています。
図1:非同期整流式降圧コンバータトポロジ(MOSFETコントローラ/ドライバ回路を含まない)。(画像提供:ROHM Semiconductor)
コントローラ/ドライバ回路は出力電圧を感知し、出力電圧を望ましいレベルで維持するため、MOSFETを周期的にオンとオフを切り替えます。負荷が変化する場合、コントローラ/ドライバはMOSFETのON時間を変化させ、必要に応じて出力に供給する電流を増減させることで、出力電圧を維持(安定化)します。1回の完全なオン/オフのサイクルのうち、MOSFETがオンになっている時間の割合をデューティサイクルと呼びます。そのため、デューティサイクルが高いほど、より大きな負荷電流に対応できます。
同期整流式降圧
非同期整流式降圧よりも高い効率を必要とするアプリケーションでは、ショットキーダイオードを同期型MOSFET整流に置き換えた同期整流式降圧コンバータを利用できます(図2)。同期型MOSFET(S2)のオン抵抗はショットキーの抵抗値より大幅に低いため、低損失・高効率となりますが、コストが増加します。
1つの課題は、MOSFETが2個になるため、オンとオフを調整する必要があることです。両方のMOSFETが同時にオンになると、入力電圧を直接グランドに接続する短絡が発生し、コンバータが損傷または破壊してしまいます。それを防ごうとすると、制御回路が複雑になり、非同期設計に比べてコストと設計時間がさらに増えてしまいます。
同期整流式降圧のこの制御回路は、スイッチング遷移の間に「デッドタイム」を設け、両方のスイッチをごく短い時間だけオフにすることで、同時導通を回避します。設計者にとって幸いなのは、降圧コンバータの製造に必要なパワーMOSFETと制御回路を統合した電源ICを入手できるということです。
図2:ショットキーダイオードを同期整流式MOSFET(S2)に置き換えたことを示す同期整流式降圧コンバータトポロジ。(画像提供:ROHM Semiconductor)
統合型降圧コンバータIC
高度に統合された降圧コンバータICとして、たとえば、ROHMのBD9G500EFJ-LA(非同期整流式)がHTSOP-J8パッケージ、BD9F500QUZ(同期整流式)がVMMP16LZ3030パッケージで提供されています(図3)。
BD9G500EFJ-LAは、耐電圧が80Vで、5G基地局やサーバーなどのアプリケーションに見られる48V電源バスで使用することが想定されています。また、電動自転車、電動工具、FA、IoTデバイスのような60V電源バスを備えたシステムにも適しています。最大5Aの出力電流を供給でき、2~5Aの出力電流範囲における変換効率は85%です。ソフトスタート、過電圧、過電流、サーマルシャットダウン、不足電圧ロックアウト保護などの機能を内蔵しています。
図3:BD9G500EFJ-LA非同期整流式降圧コンバータICはHTSOP-J8パッケージ、BD9F500QUZ同期整流式降圧ICはVMMP16LZ3030パッケージで提供されます。(画像提供:ROHM Semiconductor)
BD9F500QUZ同期整流式降圧電源ICの降伏電圧は39Vです。したがって、24V電源バスを備えたシステムの設計者はこれを利用し、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)やインバータなどのFAシステムにおける実装面積や部品点数を削減すれば、システムコストを抑えることができます。
BD9F500QUZは、ソリューションサイズを約60%削減し、2.2MHzの最大スイッチング周波数によって1.5μHの小型インダクタを使用できるようにします。この同期整流式降圧は、3Aの出力電流により最大90%の効率で動作します。
高効率と高熱効率のパッケージの組み合わせによって、ヒートシンクが必要なく動作温度が約60℃となり、省スペース化、信頼性の向上、コスト低減が実現します。内蔵機能には、出力コンデンサ放電機能、過電圧、過電流、短絡、サーマルシャットダウン、および不足電圧ロックアウト保護機能が含まれます。
インダクタとコンデンサの選定
BD9G500EFJ-LAとBD9F500QUZはパワーMOSFETを内蔵していますが、設計者は相互に関連する最適な出力インダクタとコンデンサを選択する必要があります。たとえば、インダクタと出力コンデンサを合わせたサイズを最小にし、出力電圧のリップルを十分に低減するためには、インダクタンスの最適値が重要です。過渡要件も重要であり、システムによって異なります。負荷の過渡振幅、電圧偏差の制限、コンデンサのインピーダンスは、すべて過渡性能とコンデンサの選択に影響します。
設計者は複数のコンデンサ技術を利用できますが、それぞれに異なるコストと性能のトレードオフがあります。通常、降圧コンバータの出力静電容量には積層セラミックコンデンサ(MLCC)が使用されますが、設計によってはアルミ電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッド電解コンデンサの使用が有効な場合もあります。
ROHMはインダクタやコンデンサの選定プロセスを簡単にするために、以下を含むこれらの電源ICのデータシートにおいて、包括的なアプリケーション回路例を設計者に提供しています。
・入力電圧、出力電圧、スイッチング周波数、出力電流
・回路図
・数値、部品番号、メーカーを記載した部品表(BOM)の提案
・動作波形
BD9G500EFJ-LAの詳細なアプリケーション回路は、スイッチング周波数がすべて200kHzで、以下の3つがあります。
・7~48VDC入力で、出力は5.0VDC(5A)
・7~36VDC入力で、出力は3.3VDC(5A)
・18~60VDC入力で、出力は12VDC(5A)
BD9F500QUZの詳細なアプリケーション回路は以下の7つです。
・12~24VDC入力で、出力は3.3VDC(5A)、スイッチング周波数は1MHz
・12~24VDC入力で、出力は3.3VDC(5A)、スイッチング周波数は600kHz
・5VDC入力で、出力は3.3VDC(5A)、スイッチング周波数は1MHz
・5VDC入力で、出力は3.3VDC(5A)、スイッチング周波数は600kHz
・12VDC入力で、出力は1.0VDC(5A)、スイッチング周波数は1MHz
・12VDC入力で、出力は1.0VDC(5A)、スイッチング周波数は600kHz
・12VDC入力で、出力は3.3VDC(3A)、スイッチング周波数は2.2MHz
加えて、ROHMは、「スイッチングレギュレータの出力平滑に使用されるコンデンサの種類とその注意事項」に関するアプリケーションノートを設計者に提供しています。
評価ボードによる設計プロセスの加速化
設計プロセスの加速化を図るため、ROHMは、BD9G500EFJ-LAとBD9F500QUZ向けに、BD9G500EFJ-EVK-001とBD9F500QUZ-EVK-001評価ボードをそれぞれ提供しています(図4)。

図4:BD9G500EFJ-LAとBD9F500QUZ降圧コンバータIC向けのBD9G500EFJ-EVK-001(左)とBD9F500QUZ-EVK-001(右)評価ボードは、設計者にとってデバイスが要件を満たしているかどうか素早く確認するのに役立ちます。(画像提供:ROHM Semiconductor)
BD9G500EFJ-EVK-001は、48VDC入力から5VDC出力を生成します。BD9G500EFJ-LAの入力電圧範囲は7~76VDCで、出力電圧は外付け抵抗で1VDC~0.97×VINまで設定可能です。また、外付け抵抗を使用して、動作周波数を100~650kHzの間で設定することもできます。
BD9F500QUZ-EVK-001評価ボードは、12VDC入力から1VDC出力を生成します。BD9F500QUZの入力電圧範囲は4.5~36VDCで、出力電圧は外付け抵抗で0.6~14VDCまで設定可能です。この電源ICでは、600kHz、1MHz、2.2MHzの3つのスイッチング周波数が選択可能です。
基板レイアウトの注意点
BD9G500EFJ-LAとBD9F500QUZを使用する際の一般的なプリント基板レイアウトの注意点を以下に示します。
1.フリーホイールダイオードと入力コンデンサは、IC端子と同じプリント基板層で、できるだけICに近い場所に設置する必要があります。
2.熱放散を高めるため、可能な限りサーマルビアを搭載する必要があります。
3.インダクタと出力コンデンサはできるだけICの近くに配置してください。
4.リターンパス回路のトレースは、インダクタやダイオードなどのノイズ源から遠ざけてください。
より具体的なレイアウトの詳細については、各デバイスのデータシートおよび「降圧コンバータのPCBレイアウト技術」に関するROHMのアプリケーションノートに記載されています。
まとめ
このように、非同期整流式や同期整流式降圧コンバータを使用すると、さまざまなFA、IoT、5Gアプリケーションにおいて、リニアレギュレータよりも高い変換効率を実現できます。特定の設計にあわせてカスタムの降圧コンバータを設計することは可能ですが、複雑で時間のかかる作業になってしまいます。
その代わりに、設計者はパワーMOSFETと制御・駆動回路を統合した電源ICを採用し、小型でコスト効率の良いソリューションを実現することができます。また、コンデンサの選定やプリント基板レイアウトに関するアプリケーションノート、詳細なアプリケーション回路例、評価ボードなど、市場投入までの時間を短縮するためのさまざまなツールも提供されています。
お勧めの記事
(1) 基礎解説:コンデンサのタイプごとの特性を理解して適切かつ安全に使用する
(2) 適切な電源デバイスを正しく適用して産業用電源の要件を満たす方法
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