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【問9】高周波電流のループを断ち切るインダクタに着目する ~EMC対策と変換効率の高効率化を上手に実現~

電流の急峻な変化を抑制するインダクタに着目する
~EMC対策と変換効率の高効率化を上手に実現~

[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 藤尾 昇平
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問9 [レベル:基本]
 電源回路(図1)を基板化するときに重要なのは,スイッチング電流ループの経路を同定(identify)することです.スイッチング電流ループの特性として正しいものは次のどれでしょうか?

(a) 必ずインダクタを経由する
(b) 必ずスイッチを経由する
(c) 必ず出力フィルタ・キャパシタを経由する
(d) 上記のすべて
 
 
 
  ●即答
 正しい答えは(b)です.
 電力インバータの変換効率を確保するためには,スイッチング電流ループ(すなわちインバータの電流経路)は,高い di/dt 特性をもつ経路でなければなりません.そのためには、一般に電流ループの面積を小さくすることが重要です(1)
 電流ループを構成する部品は,インバータ回路のタイプによって異なりますが,電流のスイッチングを担う部品は電流ループの一部として機能します.
 インダクタは,回路を流れる電流の急激な変化を抑制するため,決して電流ループの構成部品にはなりえません.出力フィルタ・キャパシタは,いくつかの電源回路,例えば,昇圧型DC-DCコンバータにおいては,電流ループを構成する部品になることがありますが,すべての電源回路においてスイッチング電流のループ経路を構成する部品となるわけではありません.
 


図1 電流の急峻な変化を抑制する電源回路のキー・パーツ
「インダクタ」は,
スイッチング電流のループには含まれない


訳注
(1)スイッチング電流の経路には,急峻に変化する( di/dt の高い)電流が流れるが,インダクタは電流の急峻な変化を抑制する.EMC対策や電⼒変換効率の向上のためにはスイッチング電流の経路を特定してそのループ面積が小さくなる様に配線設計をする必要があるが、電流の経路を特定する際にインダクタを含む経路は除外できる。

 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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