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【問21】「平衡から平衡に」,「不平衡から不平衡に」が基本 ~平衡と不平衡の接続点にはコモン・モード電圧が生じる~

「平衡から平衡に」,「不平衡から不平衡に」が基本
~平衡と不平衡の接続点にはコモン・モード電圧が生じる~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問21 [レベル:中級]
 3.3V,100Mbpsのディジタル信号が基板上のマイクロストリップ状のプリント・パターンを流れ,基板端でツイスト・ペア線につながれています.プリント・パターンとツイスト・ペア線の特性インピーダンスはどちらも100Ωで,信号終端は整合されています.このとき,ツイスト・ペア線を駆動するコモン・モード電圧は,基板に対して何V発生するでしょうか?

 (a) 0V
 (b) 信号電圧の2分の1
 (c) 100MHzで3mV
 (d) 100MHzで3V
 
 
 
  ●即答
 最適な答えは(b)です.

 不平衡の差異モデル(1)(imbalance difference model)から,インターフェース部 (マイクロストリップ線路とツイスト・ペア線の結合部) に発生するコモン・モード電圧は,ディファレンシャル・モード電圧にインターフェース部での両線路の不平衡率(2)の変化を乗じたものになることが知られています.

 この例のマイクロストリップ状のプリント・パターン (要は,マイクロストリップ線路) はほぼ完全な不平衡線路,ツイスト・ペア線(撚り対線)はほぼ完全な平衡線路であるため,不平衡率の変化は約0.5になり,発生するコモン・モード電圧は信号電圧の半分(1.65V) になります.

 シールドなしのケーブルが基板に対して1.65Vの振幅,100Mbpsのデジタル信号で駆動されるとき,放射エミッションが問題となることは明らかです. 高速データ伝送の原則は「信号が平衡であるときは,そのまま平衡を維持し,不平衡なときは不平衡を維持」することです.

 電気的平衡についてもっと知りたい場合は,LearnEMCのウェブサイト(https://learnemc.com/)の[EMC Tutorial Articles]-[EMC Tutorial Articles]-[Imbalance Difference Modeling]-[Introduction to Imbalance Difference Modeling(不平衡の差異モデル入門)]を参考にしてください.

 最後に,100MHzの高調波の振幅はどうなると思いますか?1.65Vの矩形波の第1次高調波の振幅は実効値で約740mV,すなわち117dBμVになります(3)

図1 平衡線路と不平衡線路の接続点にはコモン・モード電圧が生じる
 
 
  訳注
(1)個々の伝送線路がもつ不平衡度の違いから,コモン・モード電圧の発生の場所と振幅を説明するモデルのこと.

(2)不平衡率は,電流分配率ともいう.2線の伝送線路にコモン・モード電流が流れているとき,両線路に同じ大きさの電流が流れるときは1/2,一方だけに流れるとき0になる.つまり平衡線路は0.5,完全な不平衡線路は0になる.

(3)矩形波をフーリエ変換したとき得られる第1次高調波の振幅は0.64である.したがって,\( 1.65 \times 0.64 /\sqrt{2}で0.74V\)である.これだけの振幅があれば十分大きな電界放射になることを示唆している.
 
     


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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