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【問22】流れ出た電流は,必ず信号源に戻ってくる ~もっともインピーダンスが低いところを戻る~

流れ出た電流は,必ず信号源に戻ってくる
~もっともインピーダンスが低いところを戻る~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問22 [レベル:基本]
ICピンから出力されて基板のプリント・パターンを流れる電流は最終的にどこに向かって流れますか?

 (a) このプリント・パターンの他端につながるもの
 (b) シグナル・グラウンド
 (c) 製品の大地グラウンド
 (d) このICのその他のピン1つ以上
 
 
 
  ●即答
 正しい答えは(d)です.

 キルヒホッフの電流則(Kirchhoff's current law)は,「ICから流れ出た電流に等しい電流が流れ戻る」ことを要求しています.つまり,ICの信号ピンから出力された電流はすべて元のICにたどり着かなければなりません(図1).

 電流の大部分がプリント・パターンの他端(負荷端)に接続されたものに到達することを期待しますが,そこで止まるわけにはいきません.元の信号源まで戻る必要があるのです.ただし,プリント・パターンと他の導体との間にできる相互容量により,プリント・パターンの負荷端に到着する電流の量が,信号源を出る電流と等しくならない可能性はあります.

 信号源に電流の大部分を運び戻す導体のすべてに「グラウンド」という名前が付けてあるわけではありません.名前には関係なく,電流はもっともインピーダンスが低い経路を選んで信号源に戻ってきます.ICから出力される電流が大地グラウンドへ流れ出ることはありません.

   図1  
問: 32MHzクロック源から出力された電流はどの経路を通って戻るでしょうか?
答え:基板裏面のベタ・グラウンドのクロック信号パターン(青色)直下を通り,クロック発振器のグラウンド端子に戻る
     


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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