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【問27】経年劣化を考慮した材料選択が必要 ~めっきを利用する意味を理解する~

経年劣化を考慮した材料選択が必要
~めっきを利用する意味を理解する~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問27 [レベル:基本]
銅線と固定用アルミニウムねじとの接続部で,最終的に起きる現象は何でしょうか?
 (a) ガルバニック腐食による抵抗の増加
 (b) ガルバニック腐食による抵抗の低下
 (c) 摩擦帯電による電圧の上昇
 (d) 錫のウイスカ(ひげ)
 
 
 
  ●即答
 正解は(a)です.

 電解液中で2種の異なる金属が接触すると,それぞれの金属のガルバニック系列(galvanic series)における相対的な位置に応じて,一方の金属が陽極(アノード)として,他方の金属が陰極(カソード)として作用し,金属間の電子移動が起き,陽極材料の腐食が加速します(1).例えば,銅とアルミニウムを接続すると,アルミニウムが陽極材料になります.

 ここでいう電解質は通常,少量の不純物を含む水分です.アルミニウム表面に形成される腐食部の抵抗率は,2つの金属のいずれの抵抗率よりもはるかに高く,その接続抵抗は時間とともに増します.そこで,異種金属を電気的に結合する場合はたいてい,めっき(plating)などの仲介材料を利用して,ガルバニック腐食が進みにくくします.

 (c)摩擦帯電とは,2つの絶縁材料が素早く分離したときに発生する電荷分離を意味しています.

 (d)錫のウイスカ(whisker,ひげ)は,錫を含む材料(特に,錫はんだ)から時間の経過とともに発生する長いひげ状の突起です.

   図1 銅線と固定用アルミニウムねじの接触部の抵抗は,
周辺の湿度による腐食によって増大する
 

訳注
(1)アルミ製のねじで導線を固定すると,その周囲の湿度が「電解液中で2種の異なる金属が接触する」状況をもたらす.ねじでしっかりと導線を固定したつもりでも、ガルバニック効果で接触部に腐食がおき,せっかくのグラウンドへの低インピーダンスの接続に経年劣化が起きる.


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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