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【問29】グラウンドへは「低インピーダンスで接続」の基本に忠実に!~フェライト・ビーズのグラウンド挿入は百害あって一利なし~

グラウンドへは「低インピーダンスで接続」の基本に忠実に!
~フェライト・ビーズのグラウンド挿入は百害あって一利なし~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問29 [レベル:基本]
グラウンドと直列にフェライト・ビーズを入れることが望まれるのはどういう場合でしょうか?
 (a) A-Dコンバータ(Analog to Digital Converter)のグラウンド接続
 (b) 安定した電圧基準のグラウンド接続
 (c) アプリケーション・ノートに示されている場合
 (d) 上記のすべて
 (e) 上記のいずれでもない
 
 
 
  ●即答
 最適な答えは(e)です.

 どんな言い訳をしても“ground”または“gnd”とラベル付けされた配線や接続点に直列にフェライト・ビーズを入れることは認められません.

 実際,このようなフェライト・ビーズの使い方は,高周波でのノイズを悪化させる可能性があるだけでなく,電流リターンの分離が必要かもしれない低周波においてもまったく効果はありません.

 A-Dコンバータのグラウンド端子は,通常,プリント基板のグラウンド面に直接接続します.基準電圧源やクロック乗算器にも同様のアドバイスが適用されます.これらのデバイスに電源を接続するときは,フィルタを必要とする場合が多いですが,電源リターン(多くの場合“ground”とラベルが付けられている)のインピーダンスを(フェライト・ビーズを直列に挿入することで)上げてはいけません.

 上に述べたことは,EMCやシグナル・インテグリティを専門とする技術者の間で広く理解されていますが,多くのアプリケーション・ノート(特に古いもの)では,いまだにフェライト・ビーズをグラウンドに挿入することを推奨しています.これは,特にまずいアドバイスで,一部の製品でノイズに関連した重大な問題の原因になりました.

 概して,アプリケーション・ノートは,EMC要件を満たすためのプリント基板のレイアウトに関しては十分な情報源ではありません.中には役立つアドバイスを提供してくれるものもありますが,時代遅れの設計ガイドや粗悪なモデルに依存しているものもあります.アプリケーション・ノートが10年以上前に発行されている場合や,ガイドが一般的に受け入れられているやり方に反していそうな場合は,信用すべきではありません.

   図1 グラウンドにフェライト・ビーズを挿入する対策は百害あって一利なし  


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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