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【問30】0.01μFのキャパシタが好まれる理由 ~インダクタンスとなってもまだ働くから~

0.01μFのキャパシタが好まれる理由
~インダクタンスとなってもまだ働くから~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問30 [レベル:基本]
プリント基板上のデカップリング・キャパシタが有効な最大周波数において,そのインピーダンスはどのようになっているでしょうか?
 (a) 負のリアクタンス(静電容量)
 (b) 正の抵抗
 (c) 正のリアクタンス(インダクタンス)
 (d) 負の抵抗
 
 
 
  ●即答
 最適な答えは(c)です.

 デカップリング・キャパシタは,インピーダンスがほかの電荷供給源より低ければ電荷を供給します(1)

 低い周波数では,インピーダンスは静電容量が支配的になり,高い周波数では一般に接続インダクタンス(2)が支配的になります.

 高周波デカップリング用の表面実装多層セラミック・キャパシタ(MLCC,Multilayer Ceramic Capacitor)は,最も効果を発揮する周波数において,そのインピーダンスはインダクタンスが支配的です.

 例えば,公称値が0.01μFで,電源層への接続インダクタンスが2nHの0603サイズの表面実装MLCCの自己共振周波数は約36MHzです.36MHzを超える周波数では,キャパシタのインピーダンスは正のリアクタンスになります(3).0.01μFがプリント基板のデカップリングに多用される理由の1つは,適切に接続された表面実装型(SMT,Surface Mount Technology)の0.01μFキャパシタの自己共振周波数が,放射エミッション周波数帯域(30MHz以上)と重なるからです.

 接続インダクタンスが等しく,容量値が0.01μFより大きいキャパシタは,30MHz以下で高い効果を示すことがあっても、30MHz以上において0.01μFのキャパシタほど高い効果を示すことはありません.

   図1 デカップリング・キャパシタが有効な最大周波数において,
インピーダンスはインダクタンスになっている
 
訳注
(1)デカップリング・キャパシタは,インピーダンスとしてキャパシタンスの特性を示さなくなっても,周辺の電荷供給源よりインピーダンスが低いと,継続して電荷を供給し続ける.

(2)キャパシタのリード・インダクタンスと配線のインダクタンスを合わせたもの.

(3)共振点ではリアクタンス成分は0,共振点を過ぎるとキャパシタンスはもはや特性的にはインダクタンスに見える.実際デカップリングしたい周波数は36MHz以上になるから,それらの周波数ではインダクタンスが支配的な状態になる.デカップリング・キャパシタの効果は,自己共振点を過ぎてからも効果が出る.デカップリングでは比較的広い周波数帯をカバーする.


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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