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【問31】スイッチングを速めたいその理由 ~損失が増え、ノイズ対策が難しくなるけれど~

スイッチングを速めたい理由
~損失が増え,ノイズ対策が難しくなるけれど~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問31 [レベル:基本]
スイッチング電源コンバータのスイッチング周波数を高周波化する重要なメリットは何でしょうか?
 (a) 効率の向上
 (b) EMIの低減
 (c) 部品の小型化
 (d) 上記のすべて
 
 
 
  ●即答
 最適な答えは(c)です

 同じ出力電流なら,スイッチング周波数をより高くすることで,磁性材料を飽和させることなく,より小型のインダクタやトランスを選ぶことができます

 スイッチング周波数を高めるもう1つの利点は,急速に変化する電力需要量に素早く応答して,より安定した出力を供給できることがあります

 一般にスイッチング・デバイスでは,熱に変わる電力損失量はスイッチング周波数にほぼ比例しますしたがって,(a)の効率の向上はスイッチング周波数を高めたことによる利点とは言えません

 部品の小型化は,EMI設計(1)の強みになるとの意見もあるかもしれませんが,これらの部品の近傍電磁界結合はスイッチング周波数とともに増加するため,スイッチング周波数をより高くすると,EMI要件を満たすための課題はより難しくなります.

  図1 スイッチング周波数を高周波化すると,DC-DCコンバータを小型化できる  
     
訳注
(1)EMI (Electro-Magnetic Interference)と言った場合,放射・伝導エミッションのことを指すEMIが一般的だったが,CISPR22が出てきてから,“disturbance wave”など,物理的ではない用語の使用が多くなった.


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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