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【問34】電流は,最短距離じゃなくインピーダンス最小ルートで帰ってくる ~低周波は抵抗値の低い道を,高周波はインダクタンスの低い道を選ぶ~

電流は,最短距離じゃなくインピーダンス最小ルートで帰ってくる ~低周波は抵抗値の低い道を,高周波はインダクタンスの低い道を選ぶ~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問34 [レベル:基本]
回路基板上の電流が,抵抗値が最も低くなる経路を流れるのは,どの周波数においてでしょうか?
 (a) 直流だけ
 (b) kHz以下
 (c) MHz以上
 (d) すべての周波数
 
 
 
  ●即答
 最良の答えは(b)です.

 電流は,インピーダンスが最も低い経路を選んで流れます.低周波ではインピーダンスは抵抗が支配的です.

低周波電流の戻り方
 電流は可能なすべての経路を流れます.このとき各経路の電流密度は,経路の抵抗値に反比例します.(図1:部品面)と(図2:リターン面)に示すように,電流は点Aから点Bまでトレース上を流れ,プレーン上を流れて戻るとき,低周波電流はプレーン全体に広がります.最も電流密度が高くなるのは,2点間を最短距離で結ぶ経路であり,信号トレースの経路には依存しません.

高周波電流の戻り方
 MHz以上の高周波電流では経路のインピーダンスはインダクタンスによって決まります.プレーン上を戻る電流は,磁束の形で蓄えられるエネルギが最小となる経路を選択します.マイクロストリップ線路の場合は,プレーン上の電流のほとんどは信号トレース直下,ストリップ線路の場合は直上/直下の比較的狭い経路に集中します.

図1 部品実装面
A、Bはそれぞれリターン面への接続
図2 リターン面
低周波では最短距離(抵抗値最小)となるリターン経路を中心にリターン電流は広がりをもつ(連続に変化する経路を線で特徴的に表現している)
   
 
 
●訳者補足

 プレーン上を戻る電流は、磁束の形で蓄えられるエネルギが最小となる経路となる.マイクロストリップ線路の場合は、プレーン上の電流のほとんどは信号トレース直下、ストリップ線路の場合は直上/直下の比較的狭い経路に集中して流れる.

 
     


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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