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【問35】高周波スイッチング電流のループ面積を最小に ~不要なプリント・パターンは作らない~

高周波スイッチング電流のループ面積を最小に
~不要なプリント・パターンは作らない~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問35 [レベル:基本]
図1に示すのは,降圧型DC-DCコンバータ基板の部品面のプリント・パターンです.ノイズ源である高周波スイッチング電流のループは,コンバータICとどの部品との間にできていますか?
 (a) 入力キャパシタ (Cin)
 (b) 出力キャパシタ (Cout)
 (c) パワー・インダクタ (L)
 (d) グラウンド
 
 
 
  ●即答
 正しい答えは(a)です.

 制御されない電流変化 dI/dt が生じる「高周波スイッチング電流ループ」は, コンバータICと入力キャパシタをつなぐトレースで形成されます.これは,すべての降圧型コンバータに当てはまることです.

  この電流ループが作る面積は,常に最小とし、結合したノイズをコンバータから外へ伝搬させる可能性のあるトレースや回路とはなるべく離すべきです.

 ここに示した基板は,TLV62065(テキサス・インスツルメンツ製)のデータシートが基になっており,スイッチング電流のループ面積を最小化するという点では素晴らしい仕上がりと言えます.コンバータICとその周辺部品の直下にベタ・グラウンド層を設けることが前提になっており,ループのインダクタンスを最小化するために大切なことです.

 しかし,部品面にグラウンドを設ける必要はありません.入力キャパシタ (Cin) は,単にコンバータICの隣にある VIN に接続し,第2層のグラウンド・プレーンにビアや他のはんだパッドを通して接続できたはずです.

 出力キャパシタ (Cout) も同様に,隣にある表層のグラウンド・パターンは不要です.Coutは,第2層のグラウンド・プレーンに直接接続すべきです(1).入力キャパシタ(Cin)とグラウンド・プレーンへのビア接続を共有してはなりません.


図1 DC-DCコンバータICと入力キャパシタの間の
高周波スイッチング電流のループはノイズ源である

   
 
  ●訳注
 (1) 第2層にグラウンド面を設けている場合は,それを使うべきである.そのとき表層のグラウンド・パターンは無駄であるだけでなく,放射の原因にもなる.
 
     


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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