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【問37】低い周波数ではコネクタの平衡度変化は無視できる ~ディファレンシャル・モードからコモン・モードへの変換を防ぐ~

低い周波数ではコネクタの平衡度変化は無視できる
~ディファレンシャル・モードからコモン・モードへの変換を防ぐ~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問37 [レベル:基本]
 ディファレンシャルからコモンへのモード変換を防ぐために,コネクタで接続される信号線路にマッチさせる必要があるコネクタの特性はどれでしょうか
 (a) 波動速度
 (b) 特性インピーダンス
 (c) 電気的平衡度
 (d) 上記のすべて
 
 
 
  ●即答
 正しい答えは(c)です.

 伝送線路でディファレンシャル・モードとコモン・モードの変換が起きるのは,電気的平衡度に変化があるときだけです.

 波動の速度や特性インピーダンスの変化が,反射などによりディファレンシャル・モードの信号伝播に影響をもたらすことはあっても,モード変換をもたらすことはありません.

 当然,コネクタの長さが波長に比べて非常に短くなる周波数では,コネクタの一端に生じるコモン・モード電圧は,他端に生じるコモン・モード電圧により,その大部分が相殺します.このことから,短いコネクタで平衡度(すなわち不平衡度)を適正なレベルに保つことは,低いデータ転送速度において重要なこととは言えません(1)


図1 モード変換はコネクタと接続される信号線路の
平衡度の違いによっても生じる

     
 
 
   ●訳注
(1)伝送線路のもつ平衡度が変化すると,その変化量に比例してディファレンシャル・モードからコモン・モードへの変換が生じる.2つの線路があってそれをつなぐとき,コネクタにも平衡度が求められる.コネクタの電気長(実寸/対象波長)が短い場合は,コネクタでのモード変換は無視してよい.データ転送速度が低い(波長が長い)場合は,コネクタの存在はモード変換の観点から無視できる.
 


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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