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【問40】ディファレンシャル・モードは平衡線路で伝送する ~不平衡線路と平衡線路を接続するとコモン・モード電圧が生まれる~

ディファレンシャル・モードは平衡線路で伝送する
~不平衡線路と平衡線路を接続するとコモン・モード電圧が生まれる~
[原著] EMC Question of the Week 2017-2020
[著] Todd Hubing (LearnEMC社代表,米クレムソン大学名誉教授)
[訳] 櫻井 秋久
[企画・制作] ZEPエンジニアリング
 
 
 
問40 [レベル:基本]
高周波のディファレンシャル信号伝送に用いるべきではないケーブルはどれでしょうか?
 (a) リボン・ケーブル(ribbon cable)
 (b) 遮蔽されたツイスト・ペア線(twisted wire pair)
 (c) 遮蔽のないツイスト・ペア線
 (d) 同軸ケーブル(coaxial cable)
 
 
 
  ●即答
 正しい答えは(d)です.

 ディファレンシャル信号は,平衡伝送線路で伝送するべきです.上から3つの選択肢(a)(b)(c)はすべて平衡線路であり,同軸ケーブル(図1)だけが不平衡線路となります.

 平衡線路を伝搬するディファレンシャル信号が不平衡のケーブルに移るとき,接続点にコモン・モード電圧が誘起されます.この電圧が平衡線路を基準に不平衡ケーブルを駆動し,コモン・モード電流を流します.わずか5μAのコモン・モード電流が長さ1mの同軸ケーブルのシールドを流れると,許容できない放射エミッションをもたらします.


図1 同軸ケーブルのいろいろ

 
 
  訳注
(1)次式はよく知られたコモンモードの放射電界を表すものである.
\begin{align} E_{C\mathrm{max}}=1.257 \times 10 ^{-6} \frac {I_C f L}{R} [\mathrm{V/m}] \end{align} ここで,\( I_C \)はコモン・モード電流,\( f \)は対象周波数,\( L \)は線路長である.この式で,\( I_C = 8μA,f=30MHz \),\( L=1m \),観測距離 \(R=3m \) とおくと,\(36dB\)が得られる.実際にはグラウンド・プレーンからの反射による電界が加わるため,最大\(6dB\)アップする.つまり,\(5μA\)で\(36dB\)なので,\(6dB\)を足して\(42dB\)となり、FCCクラスBの30MHzでの限界値.\(40dB\)を超える.

 


 
 本稿は,2017年3月17日~2020年末の約3年間にわたり,米クレムソン大学名誉教授Todd Hubing氏が「今週のEMC問題」と題して,自社Webサイトに掲載した記事の翻訳です.本質的かつ実用的な問題が多く,世界中の回路基板設計者に愛読されています.
 高速化するディジタル・システムの電磁両立性(EMC,Electro-Magnetic Compatibility)をいかに実現するかは,技術者の本質的なテーマであり,多くの現場でカット・アンド・トライによる対策が行われ続けています.
 本メルマガでは,基本的ものから高度なものまで,マクスウェルの理論に基づいて,EMCの正しい対策を確信的に示します.なお本連載は,書籍化を予定しています.

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