デジタルテスタ周波数測定機能の活用

Linkmanのデジタルテスタ「LDM-86D」を例として説明します。
「Hzファンクション」での測定を対象とします。
このファンクションでの最大電圧は60Vまでです。
故障、感電の恐れがありますので、AC100Vなどは絶対に入力しないでください。
AC100Vなどの商用電源の周波数測定は「ACVファンクション」の中で行えますが、このレポーでは対象外とします。

周波数測定できる波形

ゼロクロス波形

「Hzファンクション」において周波数測定可能な「ゼロクロス各種波形」を図15に示します。
ゼロクロスとは図16 a ) のようにGND(ゼロ)をまたぐような波形で、図16 b ) の場合、直流成分が重畳(ちょうじょう)されていますので、これはゼロクロスではなく、「DCオフセット」がかかっていると言います。


測定可能なゼロクロス各種波形

図15において正弦波ではない波形をパルスと言い、周期性があればパルスも測定可です。
ただし、図17のように周期性のない波形は測定不可です。


測定不可な波形

(測定限界、感度)

参考として正弦波以外での測定限界(感度)の実測結果を表4、グラフ3に示します。測定できた最小電圧値で単位は「mVp-p」です。図18に実測した各種波形と図19に測定(確認)方法を示します。
(正弦波については前回レポートを参照願います)


表4
周波数(Hz) 矩形波 三角波 ランプ波
10 110 110 110
100 110 110 110
1K 110 110 110
10K 110 110 110
100K 110 120 110
1M 120 130 140

波形による感度差はそれほどなく、10Hz~1MHzの範囲で「おおむね数100mVp-p」以上であれば測定可能なようです。

感度確認した各種波形 感度測定方法

直流重畳波形

LDM-86Dで周波数測定可能な直流重畳波形を図20に示します。

測定可能な直流重畳(DCオフセット)各種波形

直流重畳の場合の測定限界は図21のように直流電圧値が約+10V~-10Vの範囲にて確認してみましたが、ゼロクロス時と比較して、若干感度が落ちるようです。
これも信号レベルが「おおむね数100mVp-p以上」であれば測定可能なようです。





重畳された直流電圧値によりゼロクロス時と比較して、若干感度が落ちるようです。


デューティ比の測定

デューティ比とは

デューティ比(DUTY)とは図22のように矩形波における1周期(T)の時間とHレベルの時間の比率を言います。
b ) ではDUTY比は20%、c ) では80%です。


DUTY(デューテー)比
DUTY 感度
1 150
10 130
20 110
30 110
40 110
50 110
60 120
70 130
80 140
90 150
99 160

各デューティ比での測定限界
LDM-86Dのデューティ比表示範囲は「0.1%~99.9%」です。
各デューティ比での感度実測結果を表5、グラフ4に示します。(周波数1KHz)
デューティ比が小さいほど若干感度低下になっていますが、これも「おおむね数100mVp-pであれば測定(表示)できる結果です。
なお、0.1%および99.9%は使用機材の関係で未確認。

デューティ比表示の注意

図23にデューティ比表示例を示します。
(図23 a)
COM端子を回路GNDへ接続し、VΩHz端子を信号へ接続。直流重畳値によらず「20%表示」。
(図23 b)
VΩHz端子を回路GNDへ接続し、COM端子を信号へ接続。直流重畳値によらず「80%表示」。

DUTY(デューテー)比の表示

デューティとシンメトリ

矩形波の1周期とHレベルの時間比率をデューティ比と言いますが、ランプ波(三角波、のこぎり波)の場合は「シンメトリ」(symmetry)と言います。

シンメトリ
注意
LDM-86Dの場合、シンメトリは測定できません

デューティ測定の応用例

デューティーの応用として図25の波形において「Hレベルのパルス幅」を測定する方法を紹介します。

Hレベルのパルス幅を測定したい

パルス幅、周期等は以下の関係です。
周期 T = 1 / F ------- ①
Fは周波数デューティ D = A / T ------- ②
パルス幅 A = D × T ------- ③

例えば図25の波形を周波数測定して「1000Hz」だったとします。①式から周波数を周期に換算すると、
周期 T = 1 / F = 1 / 1000 = 1msec
次にデューティを測定し、この結果が「20%」であれば、Hレベルのパルス幅は③式からパルス幅 A = D × T = 0.2 × 1msec = 0.2msec


周波数とデューティからパルス幅を計算

以上のように周波数とデューティを測定することによりパルス幅も測定できることになります。例えば図27のような「7SEG-LEDのダイナミック点灯」におけるパルス幅測定に応用することができます。


ダイナミック点灯のパルス幅測定 デューティ測定風景

周波数測定、デューティ比測定のまとめ

LDM-86Dについてまとめます。
感度(入力信号検知感度)はLDM-86Dの取扱説明書では1.0Vです。今回のレポートによる実測値は、あくまでも「参考程度」にとどめてください。

周波数測定可能な各種波形
①ゼロクロス、直流重畳によらず測定可。
②矩形波、ランプ波のデューティ比、シンメトリによらず測定可。
③周期性のない不連続波は測定不可。


周波数測定可能な各種波形

デューティ比測定
①表示範囲は「0.1%~99.9%」。
②感度は周波数測定時とほぼ、同等。
③ランプ波などのシンメトリは測定不可。

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