FETの使い方ガイド

スイッチング用パワーMOS-FET

 MOS-FETは真空管やバイポーラトランジスタなどと同じ能動素子(増幅作用のある部品)の一種で現代エレクトロニクスの主役です。マイコンや各種LSIの中身はほとんどがMOS-FETです。しかし、ほとんどのMOS-FETはICの構成要素として存在しIC内部の素子もカウントに入れた場合には単体(ディスクリート)のMOS-FETが回路全体の部品数に占める割合は少数です。

 スイッチング用のパワーMOS-FETは大型、高電圧、大電流、発熱が理由でIC化されずに残ったディスクリート素子ですが電源系やインバーターなどの用途
には必要不可欠です。現在、市販されているディスクリートのMOS-FETは大多数がスイッチング用です。

 大きく分けてスイッチング速度の遅い機械式スイッチの置き換え(アナログスイッチ)と高速スイッチングが必要なパルス回路用があります。同じ機能の部品としてはリレーが古くから使われています。(因みに、半導体式リレーの中身はスイッチング用MOS-FETに付随回路を組み合わせた形式が採用されているものもあります。)MOS-FETは機械式リレーのような接点の摩耗や火花の発生が無く高信頼・長寿命です。高速スイッチングは機械式接点では実現困難なMOS-FETの特長です。

 動作はスイッチングなのでON/OFFだけとなり難解なバイアス設定や増幅度関係の設計・計算、周波数特性に関わるチューニングなどが不要です。ただし、高速、大電流、高電圧に進化したパワースイッチング用には小信号用や増幅用の素子とは別な配慮が必要です。


動作の要点

 スイッチング用MOS-FETはG(ゲート)-S(ソース)間にしきい値電圧Vthを充分上回るゲート電圧(ゲート・ソース間電圧VGS)を加えればD(ドレイン)-S間がONし、G-S間の電圧を0V(短絡)にすればOFFすることが動作の基本です。

 スイッチング用のMOS-FETを選ぶ場合は、リレーと同様にコイル電圧に相当するゲート駆動電圧を決めればスイッチの接点仕様に相当するD-S間の耐圧(VDS)と流す電流の大きさ(ID)で大体の規格が決まります。

動作の要点 (a)リレー (b)FET

 アナログパワーアンプは意図的に損失を発生させて出力を加減するため出力デバイスの違いはあまり損失に影響しません。そのため、電源電圧や動作点、出力の大きさから損失を算出し、それに耐えうる規模のデバイスを選びます。それに対し、スイッチングは理想的には無損失なので損失は主にMOS-FETの性能と使い方の問題となります。オン抵抗やスイッチング速度などMOS-FETの性能に対応して損失が求まるので、スイッチング用MOS-FETの選択時はメカニカルなスイッチを選択する場合と同様に、先ず耐圧と電流で選択を絞り次に損失の見積もりと言う順序が簡単だと思います。(電圧・電流は絶対最大定格で代表する場合が多いですが実用時は十分なマージンを確保してください。)同時にゲート駆動電圧にVthが対応するものに絞ります。

 特別な要素としてスイッチングの速さを考慮する必要があります。これはデーターシート上にスイッチング速度として記載されている他、ゲートの駆動方法が大きく関係します。MOS-FETのゲートはコンデンサーと等価なため速い速度で電圧を上げ下げするには大きな電流で充放電しなければなりません。具体的にはデーターシートにおける入力容量と入力電荷に関連する特性値を考慮します。マイコンの汎用I/O出力ではVthを超えるゲート電圧を与えることはできたとしても高速スイッチングに必要な電流は出力できないので、間にゲート駆動用のドライバー回路を設けます。DC電源ライン切り替えのパワースイッチなどスピードの遅い回路ではゲート電圧を確保できればON/OFFは可能ですが切り替わりの遷移時にMOS-FETが能動状態に入るので異常動作に注意します。

 汎用の部品で高速スイッチング用のゲート駆動回路を構成するのは技術力と物量を要しますがIRS2110のような汎用ゲートドライブICを使うと簡単です。またもともとMOS-FETを外付けとすることを想定したICでは出力回路が直結可能なように設計されているはずです。リファレンスデザインで指定されたMOS-FETが入手できない場合は似たような特性の代替品を選択すれば多少の違いはあってもリニア回路のように動作点がずれて全く動作しなかったり異常に発熱したりという確率は低いでしょう。

最近の製品動向について

 技術の進歩に伴って古い製品が淘汰されて行くのはMOS-FETも例外ではありません。各社で製品ラインナップの刷新が進んでいます。特に旧い型番規定の2SK,2SJが廃番となりつつあり選択肢が減っています。新製品はメーカー独自名称なのでそちらも調査してください。性能の向上した新製品での代替が推奨されますが、まったく同等品では無いので注意します。

 例えば東芝のMOS-FETで人気のある2SK2233、2SK2312(執筆時点でメーカー発表の生産状況は新規設計非推奨または生産終了予定)はVth=0.8~2Vですがメーカーの代替推奨品はいずれもVth=2~4Vです。

損失について

 スイッチング動作ではOFF時はMOS-FETに電流が流れずON時は電圧が掛りません。そのため電圧×電流=電力損失は原理的にゼロです。しかし、ON時はドレイン飽和電圧がD-S間に存在し、損失の原因になります。飽和電圧は"オン抵抗"(RDS(ON))というより直感的な値としても表記されています。オン抵抗は数十mΩ以下の値のことも多いですがIDの規格なりに大電流を扱うと看過できるほど小さくありません。ゲート電圧がVthを充分上回らないと半導通状態となりオン抵抗は増えます。このほかスイッチングの遷移時に電流・電圧が中間的な状態になることなども損失の原因となります。(立ち上がり、立ち下がりの時間が長いと損失が増えます。)

 スイッチング用のMOS-FETはリニアな動作を考慮したトランジスタ等と比較するとVDSやIDの最大定格に対してPD(ドレイン損失)が小さくパッケージも小型なことが多いのは原理的に損失を発生しにくいという事情を反映しています。リニア回路への流用など回路設計によっては損失のある使い方も可能ですが一般に小型パッケージはパッケージと放熱板の間の熱抵抗が大きいため放熱がうまくいかない場合もあり得ます。

ゲートドライブの電流と電圧の目安

 MOS-FETは入力インピーダンスが高く駆動が簡単と言われますが、高速にON/OFFするためは瞬時に電荷を充放電しなければなりません。ON/OFFに必要な電荷はデーターシートにゲート入力電荷量Qgという値で記されています。

Q(電荷)=i(電流)×t(時間)|i一定の場合

 なる関係があるので、Qg/t(t:立ち上がり時間・任意に設定)がON/OFFに必要な電流の目安になります。(正確な動作はミラー効果と呼ばれる現象の影響などがあり、もっと複雑です。)例えば、Qg=100nCでt=1μs=1000nsとしたいとき、Qg/t=0.1AなのでマイコンのI/Oポート直結などでは力不足です。

 Qgがデーターシートに記載されている場合、測定条件としてVGSが記載されていますが、この値が確実にONするVGSの目安と考えて良いでしょう。(Vthの数倍です。)VthはIDが流れ出すすれすれのVGSとして規定されており、十分なIDを流すためにはVthの2倍程度のVGSは必要なようです。駆動電圧は10Vが標準とされ、これに対応した製品を"標準レベル"、Vthが低く、5Vないし4.5V以下で駆動可能な製品を"ロジックレベル"などと呼ぶ場合もあります。Vthが低い製品でも実用時にゲート耐圧を超えないVGSまでは駆動可能です。逆にOFFするためにはVGS≒0Vの必要がありますがVthが低すぎるとノイズ等でONする危険があります。

VDSの耐圧とID

一般に高耐圧と大電流は両立せずIDの大きいものはオン抵抗が小さいが耐圧は低く、高耐圧のものはIDが小さい傾向にあります。IDの小さいものは入力容量やゲート入力電荷が小さくなり駆動が楽です。(これらは同じプロセスの製品に関して言えることで、メーカーや開発世代が異なる製品間では関係が逆転することもあります。)耐圧とIDに関しては、大は小を兼ねるという使い方をせず必要に合わせた大きさのものを選択することが性能の向上につながります。

リニア増幅用MOS-FETとの違い

 スイッチング動作はカットオフ(OFF)と飽和(ON)の二点のみ使用し、この2点ではゲート電圧が微小な変化をしても出力電流は変わらないので増幅度(≒gm)はゼロです。これらの動作点では原理的にgmの大きさや発振防止などの配慮は必要ありません。ただしON/OFFの遷移時に波形が振動的になる場合があるのでゲートに直列にダンピング抵抗を入れるなどの施策が一般的です。

 確実なON/OFFのためには(ドレイン電流の変化)/(ゲート電圧の変化)≒gm(正確にはgmは微小変化に対する微分的な概念)が大きい方が有利ですが増幅用のように直線性(ドレイン電流の変化とゲート電圧の変化が比例関係に近いこと)は重要ではありません。また、リニア動作では電極間の容量が大きいと高周波域での増幅度の低下や発振の原因となります。高周波の小信号用では内部構成をカスコード接続とし特に問題となる帰還容量Crssの影響を抑えている品種もあります。(小信号の2SK241など。)スイッチング動作では低インピーダンス駆動でゲートに高速充電できれば良いので高速スイッチング用のMOS-FETでも電極間容量は巨大です。その場合でも動作点がONかOFFで増幅作用が無いため発振はしません。

 原理的にはMOS-FETにスイッチング用もアンプ用もなく、その用途に必要な特性を満たせば使用可能です。ただし、スイッチング用のMOS-FETは増幅用としては最適化されていないので増幅用としての適性はユーザーが独自に評価して判断する必要があります。


スイッチング用小型MOS-FET・ロードスイッチ用小型MOS-FET

 近年になって2N7002のようなID=1A以下の小型MOS-FETが目立つようになりました。IC周辺回路のカスタマイズ(=ICそのままでは微妙に対応し切れない"小細工")に使われることが多いようで、マイコンによるLEDの点灯回路やリレーやサウンダーの駆動などがその例です。メインの電源とバックアップ用の電源の切り替えなどに使うロードスイッチとしての使用例も多いようです。これらの用途にはバイポーラトランジスタや汎用ドライバー用小規模ICが使われていましたがVthの低電圧化や用途に適する小型製品の登場によりMOS-FETが採用されるようになったようです。動作はパワーMOS-FETと同じです。IDが小さい分、他も小さくなっています。小さい方が容易な面もあり、特にゲート入力電荷Qgはマイコンポートで高速駆動可能な程度に小さくなっています。ベース電流の制限抵抗が必要なバイポーラトランジスタと違い、Vthさえ条件を満たせば出力ポートに直結可能な点は有利です。三端子パッケージなので一回路であればドライバーICよりも小型化できます。

 MOS-FETはキャリア蓄積が無いためバイポーラトランジスタと比較して高速スイッチングに向くとされます。しかし、指定通り使えば動作が保証されるICと異なり、ディスクリートのMOS-FETは抵抗やコンデンサーと同じ基本部品なのでメーカーの保証の付いた限定的な使い方はありません。どのような動作や特性が実現できるかは使い方次第です。

 パワースイッチング用のFETはMOS型しか使われませんが数十mA以下の小信号用、電圧スイッチにはJ-FETも使われています。

増幅用FET、スイッチング用以外のFET

1.高周波用パワーFET

 送信機の出力段やその前の励振段に使われるパワーFETです。放熱器への取り付けとマイクロストリップラインとの接続に同時に対応するため独特の形状をしています。高速スイッチング用と高周波用で同じような名称のイメージがありますがパッケージ以外に電気的特性もまったくの別物です。

高周波小信号用FET

 高周波の増幅や発振に使われる小信号用のFETです。帰還容量の影響を避けるため内部をカスコード接続とし中和無しで安定なアンプのできる2SK241(MOS-FET)や2SK161(J-FET)、ゲート接地用のU310や2SK125、ゲートが2つありミキサーの構成が容易な3SK35など特徴のある定番品が存在しましたが旧来からの製品はほとんどが生産終了になりました。ただし、面実装型であれば類似の海外製品が入手可能なものもあります。また生産中止品を専門的にリバイバルさせているメーカーもあります。


(U310/J310やデュアルゲートMOS-FETもあります!)
GHz帯ではSiに代わりGaAsを使用したHEMTと呼ばれる新型製品も一般的になりました。


高周波用小型FET(MOS-FET)



高周波用小型FET(J-FET)

3.汎用・低周波用J-FET

 汎用・低周波の小信号用FETはほとんどがJ-FETです。ディスクリートFETの全盛期にはMOS-FETが技術的に未発達だったことが理由の一つのようです。(MOS-FETはJ-FETと比較して1/fノイズが大きく低周波で不利です。)国内での定番は2SK30Aですが生産終了となりました。TO-92型のようなリード線引き出しのパッケージはパッケージ自体が世界的に生産終了の方向にありますが、面実装品であれば同様な規格の製品は今のところ入手可能です。

 G(ゲート)を中心にS(ソース)、D(ドレイン)が対称で入れ替え可能なものが多く増幅用以外にメカニカルなスイッチ同様の双方向アナログスイッチも特徴的な用途の一つです。(通常のMOS-FETはゲートと対になって電流の道(チャネル)を構成するバックゲートがソースに接続された構造のためソース・ドレインの入れ替えはできません。)

 デプレッション型であるJ-FETの特性を生かしてG-Sを接続した定電流回路も良く使われる用途です。これは機能的には定電流ダイオードで代替できます。

4.オーディオ小信号用FET

 汎用・低周波用と大体は同じで汎用の2SK30A(生産終了品)はオーディオ用としても定番です。しかしオーディオ用には超ローノイズ品や差動回路用のデュアルFETなど特殊な定番品もあります。(ありました。)従来からの定番品はほとんどが生産終了となりました。代替の困難なものがほとんどですが他のメーカーによる相当品が存在する品種もあるようです。


オーディオ用パワーFET(アナログパワーアンプ用)

 オーディオのアナログアンプに使用されるパワーFETです。スイッチング用のパワーMOS-FETと重なる製品もありますがリニアアンプ(アナログアンプ)用にはスイッチング用に発達した製品より旧型の製品の方が使いやすくメーカーがオーディオ用として供給する製品も旧型製品の継続品です。(最近のスイッチング用とは電気的な特徴が異なります。)2SK1056/2SJ160(コンプリメンタリ)とその耐圧違い版がほとんど現行唯一の製品となりました。
 なお、J-FETは構造がハイパワー化に向かずパワーFETはすべてMOS型です。例外としてJ-FETの構造を改良してハイパワー化したSITの民生版がV-FETと称されてオーディオ用に生産されたこともありましたが短期間で生産終了となり幻と呼ばれる存在になりました。


J-FETによるソース接地増幅回路の設計例

ソース設置増幅回路



図9の回路で設計してみます。 C2は交流的にソースをGNDに接続するためのコンデンサです。これが無いと増幅度が小さくなります。

仕様
●電源電圧 Vcc=10V
●FET 東芝2SK170-BLランク
 IDSS 6.0?12mA
●RL=10KΩ

ドレイン電流IDの設定

ドレイン電流IDの設定



BLランクのIDSSは図10のようにばらついています。 ここではIDSSのほぼセンター値であるIDSS = 9.0mAの特性上で設計してみます。 IDは0より大きく9mAの間であればどのポイントでもよさそうですが、IDの値が低いとgmの値が小さく、 また、9mA近辺では入力信号の大きさにより、VGSが正の領域になる恐れがありこれはNGです。 (入力信号が小さければIDの値が大きいポイントが良いです) ここでは、

  ID = 6mA となるようにしてみます。

これは入力信号が無い(無信号)状態で6mAのドレイン電流が流れていることになります。

VGSの値

任意のIDにおけるVGSはデータシートのグラフから読み取ることも可能ですが、 計算式により求めたほうが簡単です。
IDSS = 9mA ID = 6mA VGS(OFF) = -0.57V の条件から計算により求めると、

   VGS ≒ -0.1V

この電圧(-0.1V)となるようにすれば無信号時のドレイン電流が6mAになります。

★RDとRSの設定

RSの値は大きいほどIDSSのばらつきに対して有利になりますが、あまり大きいと この抵抗による電圧降下分は交流信号に対して使えないことになります。これを考慮して

     RS = 560Ω にしてみます。

RDは大きいほど増幅度があがります。ここではRSと同じ560Ωにしました。 この時の直流電位関係を図11に示します。

直流電位

R1、R2の算出

VGSは次式で表わされます。

R2以外はすでに Vcc = 10V VGS = -0.1V ID = 6mA RS = 560Ωです。
R2はいろいろな値が考えられ(選択)ます。あまり小さい値ですと、 回路の入力インピーダンスが低くなります。ここでは、

 R2 = 100KΩ とすると、
 R1 = 100K [ { 10 / (-0.1 + 6mA・560Ω) } - 1 ] ≒ 206.7KΩ となり、 E24系列の中から
 R1 = 200KΩ

gmの算出

任意のVGSにおけるgmは計算式で求めることができ、IDSS = 9mA VGS(OFF) = -0.57V VGS = -0.1V の条件では、

 gm ≒ 26mS

増幅度の算出

③式から

増幅度の算出

注意:マイナス符号は無視しています

入力インピーダンス

ETのゲートは高抵抗なのでこの部分は図12のようにオープンと見なせます。 結局、回路の入力インピーダンスはR1とR2の並列合成になり、 R1 = 200K、R2 = 100Kですから、約66KΩになります。

入力インピーダンス
ドレイン電流IDの設定



定数決定回路を図13に示します。
結局、この回路で、

 電圧増幅度Av +22.78dB 入力インピーダンス
 約66KΩ

入力インピーダンスはトランジスタで構成した場合、高くする(例えば数10KΩ以上)には工夫が必要です。 しかし、FETで構成すると入力インピーダンスは抵抗R1、R2で決定されますので、 その設定(設計)は容易です。


回路の入力インピーダンスが高いということは、信号源インピーダンスが高い信号を増幅したい場合に有利です。 例えば、図14のように信号源インピーダンスが10KΩで、この信号源からの出力電圧が1Vとします。
図14 a ) の増幅回路の入力インピーダンスが5KΩでは実際に入力される信号電圧は 0.333Vとなり、ロスが発生します。
これに対し、図14 b ) のように入力インピーダンスが66KΩの場合、実際に入力される 信号電圧は0.868Vとなり、ロスが少なくなり効率良く増幅することが出来ます。
このように信号源インピーダンスが高い場合、増幅回路としては 入力インピーダンスが高いことが望まれます。

入力インピーダンスによる違い

図13の例では入力インピーダンスが66KΩになりましたが、図15のように 抵抗R3を追加することにより、さらに入力インピーダンスを高くすることが出来ます。
R3の値が何Ωであろうが、ゲートには電流が流れませんのでバイアス電圧は R1,R2で決まります。したがって、バイアスポイントを変えないで、 R3により入力インピーダンスを決定することが出来ます。

自己バイアス(電圧分割、高抵抗)

例えば図16のようにR3 = 220KΩとすれば回路の入力インピーダンスは286KΩとなり、 実際に入力される信号電圧は0.966Vとなり、効率良く増幅することが出来ます。

Zi=286KΩの場合

以上をまとめたものを図17に示します。

FETとトランジスタ

●入力抵抗が高いので信号源インピーダンスが高い場合に有利
●さらに入力抵抗を高くすることが容易
●バイアス設計が容易
(R1、R2の値は任意で良い)

●入力抵抗がが低く、高くするには工夫が必要
●R1、R2はバイアス設計に関係するので自由に選べない

オーディオ帯域での主な増幅用J-FET

表1 主なJ-FET

★順方向伝達アドミタンス Yfsとは

nチャンネル デブレッション特性

アドミタンスとはインピーダンスの逆数のことで、インピーダンスをZ、アドミタンスをYとすれば
 Y = 1 / Z の関係があります。
また、インピーダンスは実数Rと虚数Xの成分があり、
 Z = R + jX となり、 アドミタンスでは
 Y = G - jB
 G : コンダクタンス
 B : サセプタンス
Yfsは等価回路のYパラメータの1つで、意味は ソース接地の場合の「順方向アドミタンス」 VGSを変化させたときのドレイン電流の変化の割合を表わしています。 式で表現すると右のとおりで、実際にはサセプタンス分もあるのですが、 低周波の場合、この成分は小さいのでこの設計では無視しています。 したがって、低周波の場合は
 Yfs ≒ G
として、相互コンダクタンスgmを意味しています。 また、Yfsの値が大きいほど増幅度が大きくなります。 なお、表1におけるYfsは各データシートのグラフを読み取ったもので、読取ミスについてはご容赦願います。


MOS-FET増幅編

MOS-FETは近年、スイッチング素子として使われる機会が多いのですが、増幅用としても使われています。

★エンハンスメント特性

nチャンネルMOSFET エンハンスメント特性



MOS-FETはJ-FETと異なり図19のような「エンハンスメント特性」の品種が多いです。このエンハンスメント特性はゲート・ソース間電圧の値が大きいほどドレイン電流が多くなります。
この特性は図20 c ) のようにトランジスタの「VBE-Ic特性」に似ています。したがって、図20 a )のように「VGS-ID特性」の適当なポイントにバイアスを与えれば 増幅動作を行うことが出来、図20 b ) に回路例を示します。



R1,R2の組み合わせ(抵抗分割)によりバイアスを与える方法です。

エンハンスメント特性とトランジスタ

プッシュプルで用いた例

MOS-FETは比較的大きな電力を扱うことができる品種が多いです。 そこで、電力増幅用としての「プッシュプル増幅」で用いる例を紹介します。
図21に、トランジスタおよびMOS-FETで構成した場合のプッシュプル増幅の原理図を示します。
NPN→Nch、PNP→Pchに置き換えただけです。 なお、MOS FETの場合も「クロスオーバー歪」を減少させる目的で、なんらかのバイアス電圧が 必要になり、この原理図を図22に示します。

プッシュプル バイアス

プッシュプル増幅回路は、

 トランジスタの場合は、エミッタフォロワ

 MOS FETの場合は、ソースフォロワ 

ですから、 どちらの回路も電圧利得は1です。 またプッシュプル回路の入力インピーダンスZinは

 トランジスタの場合は、 Zin ≒ hfe×RL

 MOS-FETの場合は、 Zinは非常に大きい となり、
MOS FETの場合は、信号源(入力)で大きな電力を必要としません。 バイアス回路例を図23に示します。抵抗RA、RB、RCによる電圧分割です。

バイアス電圧

抵抗RBの両端の電圧降下VBは、
 VB = (Vcc×2)×RB / (RA+RB+RC) です。

例えば、
 +Vcc=+6V,-Vcc=-6V RA=RC=3.3KΩ,RB=2KΩ とすれば、

 VB=(6×2)×2 / (3.3+2+3.3)≒2.8V となります。

RA=RCであり、出力はGND電位ですから、RE1,RE2の電圧降下分を無視すれば各FETの ゲート・ソース間電圧は上記VBの半分の電圧がかかり、これによってバイアス電圧を与えています。
これを応用して図25の2SK216-Eの特性でバイアス設計をしてみます。
アイドリング電流を20mAと設定すれば、これに必要なVGSは約0.6Vです。ただし、FETは特性にバラツキの大きい素子なのでVGS=0.6Vとしても ドレイン電流IDが20mA流れるとは限りません。 そこで、RBを半固定抵抗にしてバラツキを吸収します。 なお、pチャネル側のFETは2SK216-Eのコンプリメンタリの2SJ79を用います。

図25 2SK216-Eの「VGS-ID特性」 図26 2アイドリング電流の調整

応用例

例えば図27のようにオペアンプ増幅回路の負帰還ループの中に プッシュプルを入れるとスピーカ、ヘッドホン等を十分な電力で鳴らすことが出来ます。

プッシュプルを負帰還ループの中に入れる

主なCMOS-FET

表1 主なJ-FET

ドレイン損失PDはTc=25℃における許容値


MOS FETによるスイッチングの基礎編

パワーMOS FET

スイッチング素子としてはトランジスタまたはMOS FETなどがありますが、近年は「パワーMOS-FET」が主流 になってきています。 特に大電力用のMOS FETをパワーMOS FETと言い、簡単にマイコンまたはデジタル回路と接続(インターフェース)できる製品もあります。
そこで、パワーMOS FETの簡単な使い方と製品を紹介します。

主な製品一覧

●パワーMOSFET【定格表検索】 

MOS FETの特性 ゲートしきい値電圧

パワーMOS FET(以下、MOS FETと呼ぶ)は図1のように「エンハンスメント特性」 です。 つまり、ゲート・ソース間電圧VGSを大きくするに従いドレイン電流IDも増加 します。
この特性でドレイン電流が流れはじめるゲート・ソース間電圧を「ゲートしきい値電圧」と言います。 (流れはじめるドレイン電流値は例えば、1mAまたは10mAなどと規定する)
したがって、ゲート・ソース間(VGS)にゲートしきい値電圧より十分小さいものを印加すれば、 ドレイン電流は非常に小さくなりますので、スイッチ的に「OFF」です。 また、ゲートしきい値電圧より十分大きな電圧を印加すれば大きなドレイン電流が流れることになりますので、これはスイッチ的に見れば「ON」です。
このようにVGSにデジタル的な2値の電圧を印加すればMOS FETをスイッチ素子として 用いることが出来ます。

ゲートしきい値電圧

例えば図2のようにVGSを0Vまたはゲートしきい値電圧より十分大きい電圧を印加すればLEDの消灯/点灯を行うことが出来ます。

スイッチON/OFF

ゲートしきい値電圧はデータシートの「電気的特性」の項目の1つで、 半導体メーカーにより若干の項目名、記号が異なります。 表1に主なメーカーでの項目名、記号を示します。

表1 ゲートしきい値電圧  (各データシートから抜粋)




トランジスタとの比較

図3にスイッチとして用いた場合のトランジスタとMOS-FETの 熱の違いを示します。
スイッチONの場合、トランジスタはコレクタ・エミッタ間の電圧はゼロではなく、 なんらかの電圧が残り、これをコレクタ飽和電圧VCE(sat)と言い、この時のコレクタ電流との掛け算が コレクタ損失Pcで、この電力はトランジスタ自身が消費し熱となります。 (オームの法則 P = V × I )
これに対しMOS-FETの場合、ドレーン・ソース間電圧はわずかで、 飽和電圧のかわりにドレイン・ソース間オン抵抗RDS(ON)で表わします。
RDS(ON)はMOS FET自身の抵抗ですからこの時にMOS FETが消費する電力PDは この抵抗にドレイン電流の2乗を掛け算したものになります。
(オームの法則 P = R × I × I )
ドレイン・ソース間オン抵抗は数ΩからミリΩ単位のものになり、同じ消費電流(コレクタ電流、 ドレイン電流)でもMOS FETのほうが消費電力が少なく、場合によっては放熱器が不要になります。 このようにMOS FETは放熱の点で有利で、また、スイッチのON/OFFに要する時間は トランジスタと比較して速いのも特徴の1つです。

コレクタ損失とドレイン損失


MOS FETの駆動回路

ここではLED点滅などの比較的スイッチングスピードの遅い回路を対象とした駆動回路例を紹介します。

Nチャネルの場合

極性的にはトランジスタのNPNに相当します。
図4のようにゲートしきい値電圧より十分大きく、また、十分なドレイン電流が流れるような 電圧を印加すればONします。 この場合、デジタル的に考えればINとOUTの論理は反転し、電流は
「Vcc→RL→ドレイン→ソース→GND」と流れ、このようなものを「シンク駆動 」と言います。

Nチャンネルの駆動 基本形

図5はデジタル回路(マイコン等)から駆動する例です。
MOS FETをONするための電圧が5V系では駆動できない場合、トランジスタ等を用いて 十分大きな電圧に変換しています。

電圧変換を用いる

Pチャネルの場合

極性的にはトランジスタのPNPに相当します。
図6に基本形を示します。 Nチャネルと同様にゲート・ソース間しきい値電圧Vthに対して十分大きいか小さな電圧を印加しますが、 電位的にPチャネルはソースよりゲートのほうが低くなった場合にONです。 また、ソースとゲートが同電位でOFFです。

Pチャンネルの駆動 基本形

図7はデジタル回路(マイコン等)から駆動する例です。
これも図5と同様にトランジスタにより電圧変換を行いますが、トランジスタがOFFの場合、 ゲート・ソース間電圧は同電位になりますので、これによりMOS FETはOFFになります。

トランジスタを用いた例

図8はマイコンを用いた鉛蓄電池の充電回路例です。
鉛蓄電池の充電電圧をADにて監視し、ポート出力でQ1を制御します。

マイコンを用いた充電制御回路

4V駆動などの低電圧駆動MOS FETを用いる

停電圧MOS FETの特性



一般的なMOS FETの制御はVthより十分大きな電圧が必要になりますが図9のように 「4V駆動」、「2.5V駆動」、「1.5V駆動」などのMOS FETがあり、これを「低電圧駆動品(素子)」 と言います。
これは一般的なMOS FETの特性よりVthの値を下げてデジタル回路から直接駆動 (インターフェース)できるものです。



図10に4V駆動 MOS FETを用いた5V系デジタル回路との回路例を示します。

4V駆動 MOS FETを用いる

データシートの簡単な見方

LED駆動などの低速スイッチで用いる場合に着目する主な項目について説明します。 特に「最大定格」はいかなる条件でも超えてはならない限界値 です。

ドレイン・ソース間電圧VDSS (最大定格)

ドレイン・ソース間に印加可能な最大電圧。(耐圧)

ゲート・ソース間電圧VGSS  (最大定格)

ゲート・ソース間に印加可能な最大電圧。 低電圧駆動品ほど低い値なので注意。

ドレイン電流  (最大定格)

連続動作(直流)およびパルス動作時で規定。
連続動作時はIDなどの記号、パルス動作時はIDPまたはID(pulse)などの記号。

許容損失PD  (最大定格)

MOS FET自身が消費できる最大電力。 同じ意味で「許容チャネル損失Pch」、「全損失PT(Total Power Dissipation)」 などの項目名、記号。
この最大電力は基本的にMOS FETのケース温度が25℃の条件(状態)での値。

ドレイン・ソース間オン抵抗

スイッチON時のドレイン・ソース間の抵抗。
これにドレイン電流の2乗と掛け算したものがMOS FETの電力。 オン抵抗はゲート・ソース間電圧が大きいほど小さくなり、また、ケース温度が 高くなるほどオン抵抗は大きくなる。(図11、図12)
また、ドレイン・ソース間電圧の低い品種(素子)ほど小さいので必要以上に 耐圧の高い品種を選ばないほうが許容損失の点で有利。

図11 DRS(ON)-VGS 図12 ケース温度-VGS


MOS FETの選定

MOS FETの選定を簡単にまとめると次のようになります。
★必要以上にドレイン・ソース間電圧VDSSの高いものにしない
★デジタルとの接続は低電圧駆動(4V、2.5Vなど)を用いるとインターフェースが楽
★ノイズが多い場合は低電圧駆動ではなく、ゲートしきい値電圧Vthの高いものにして大き目の電圧で駆動する

Nチャンネル4V駆動 Pチャンネル4V駆動 Nチャンネル 汎用 400V以上 Nチャンネル 汎用 250V以下