「アプリケーションラボ」は、Digi-Key社のご協力をいただいて、Digi-Key社が公開している新製品や技術情報を日本語でご紹介するWebページです。基礎技術から最新技術まで有益な情報を公開していますので、是非ご活用ください。
今回は、産業用システムのセンシングにおいてON Semiconductor社の高性能ゼロドリフトオペアンプを使用して正確なセンサデータを検出する方法について解説した記事をご紹介します。
■ゼロドリフトオペアンプを使用し高精度低電力の産業システム制御を実現する方法
産業用システムでは、様々なセンサを用いて検出したデータを活用する機会が多くなります。そのためにはセンサデータを正確に検出することが不可欠です。一般にセンシングは、ローサイド電流検出で得た信号をオペアンプで増幅しA/Dコンバータに入力します。
検出抵抗を負荷とグランドの間に入れる構成をローサイド電流検出、検出抵抗を電源と負荷の間に入れる構成をハイサイド電流検出と呼んでいます。ローサイド電流検出は、検出電圧がグランドから計測した値になるため低コストで設計が容易です。それに対し、ハイサイド電流検出は回路構成が複雑になりますが、コモンモード電圧が高くグランドに影響されないという利点があります。
得られた信号は、オペアンプを使って増幅します。理想的なオペアンプは入力が0Vなら出力も0Vですが、実際には出力にわずかな電圧が発生します。これはオペアンプの2つの入力間で電圧のずれがあるためで、このずれをオフセット電圧と言います。オフセット電圧を修正することは簡単にできますが、オフセット電圧は時間経過や温度変化などにより値が変化します。これをドリフトと言い、ドリフトに対応するのは非常に困難です。
ゼロドリフトオペアンプは、このオフセット電圧とドリフトをゼロに近い値にしたオペアンプです。ゼロドリフトオペアンプを実現する方式はさまざまですが、オートゼロ方式(チョッパ安定化型)が一般的に多く採用されています。
オートゼロ方式の回路構成は複雑です。メインアンプとオフセット電圧を検出するヌルアンプで構成され、メインアンプのオフセット電圧を検出して打ち消す動作と、ヌルアンプのオフセット電圧を検出して打ち消す動作を交互に繰り返します。サンプリング定理により、交互に繰り返すスイッチング周波数の半分の周波数のセンサ信号までを計測することができます。
< NCS325とNCS333 >
【アプリケーションラボ】では、ON Semiconductor社のゼロドリフトオペアンプNCS325SN2T1GとNCS333ASN2T1Gの特長と使用法を解説しています。これらを使用することで、比較的容易に産業用システムの信号要件を満たすことができます。NCS325SN2T1Gはオフセット電圧が50μV、ドリフトが0.25μV/℃です。また、NCS333ASN2T1Gはオフセット電圧が10μV、ドリフトがわずか0.07μV/℃です。NCS325SN2T1Gはオートゼロ方式を採用していますが、NCS333ASN2T1GはON Semiconductor社独自のチョッパー安定化アーキテクチャを採用しています。
ここで解説されているデバイスは、マルツオンラインのウェブサイトで購入できますので、是非参考にしてください。
ゼロドリフトオペアンプNCS325 【NCS325SN2T1G】 115.72円 |
|
ゼロドリフトオペアンプNCS333 【NCS333ASN2T1G】 141.67円 |
|
下記の2本の解説記事も同時に公開しました。合わせて参考にしてください。
■電子部品業界で繰り広げられる環境への影響との戦い
電子機器は生活を大変便利にしましたが、電子製品の普及によって廃棄物が環境に悪影響を与えています。ここでは、電子部品の開発において環境問題にどのように対処すればよいかについて考察します。
■アナログの基礎(パート5):SAR ADCの難しい入力駆動問題への取り組み
アナログの基礎としてA/Dコンバータの動作原理についてこれまで4回にわたり解説してきました。逐次比較型A/Dコンバータにとってアナログ信号の入力処理が非常に重要です。5回目の今回は、この難しい入力ドライバについて解説します。
|