◎はじめに

特に「直流増幅回路」で重要なのが「オフセット電圧」です。

例えば、センサ信号を増幅し、ADコンバータで取り込む場合、
誤差となる場合があります。

そこで、オフセット電圧の原因と算出(見積もり)方法について解説します。
 
~用語解説 『オフセット電圧』~
入力オフセット電圧VIO
★オフセット電圧の定義

理想的なオペアンプは入力信号がゼロの場合、
出力電圧はゼロになります。
しかし、実際のオペアンプは図1のように、
入力がゼロでも出力になんらかの直流電圧が
現れます。これを「オフセット電圧」と言います。

このオフセット電圧は一般的には
数mV~数10mVの値ですが、直流信号を扱う
増幅回路では特性に影響を与えます。

図2 a ) のような「センサ出力信号」
があったとしますと、オペアンプの
オフセット電圧が大きいと、図2 b )
のように出力信号が「点線」のように
なってしまいます。
これでは正確な増幅ができないことになります。


これに対し、交流信号のみを扱う
交流アンプの場合は、
図3のようにオフセット電圧
が生じてもコンデンサC3により
オフセット電圧は出力(C3を通った後)には
現れないので増幅回路としてはあまり、
影響を与えません。

オフセット電圧が生じる原因は
オペアンプ内部の入力回路における
トランジスタの特性の
違いによるものです。
これは、図3のようにオペアンプの
入力回路はTR1TR2の2個の
トランジスタで構成されていますが、
理想的にはこのトランジスタは同じ特性です。

しかし、実際には特性に差があるので
これによってオフセット電圧が生じます。
オフセット電圧はデータシートでは
「入力オフセット電圧VIO」で
表記されています。

例えば「NJM4558」の場合、
    VIO = 0.5mV(標準)
となっています。

この意味は
「オペアンプの出力電圧を0Vにするために
必要な入力端子間の差電圧」です。
つまり、オフセット電圧は生じるものなので、
逆に出力電圧がゼロになるための
入力端子間に必要な差電圧を言っています。

例えば、上記の VIO = 0.5mV はこの電圧差を
入力に加えれば、出力電圧は
ゼロになるということです。
したがって、別な意味では、入力がゼロの場合、
出力には0.5mVの電圧が
現れるということになります。
これが、「オフセット電圧」です。

以上の説明を図にすれば、図4になります。
電池マークのVIOが入力オフセット電圧です。
この図ではVIOはプラスの電圧になっていますが、
必ずしもプラスでは無く、マイナスの電圧もあります。
正確に表現するのであれば、VIOは
    VIO = ±0.5mV
です。

また、図4における抵抗RSはVIOを
規定するための信号源抵抗、
データシートで「測定条件」として
掲載されています。
(NJM4558のデータシートでは RS = 10KΩ)






★オフセット電圧の計算

データシートでの「入力オフセット電圧VIO」は
入力電圧に換算したもので、値は増幅度により
異なります。(増幅度により変化する)
この値は増幅度が大きくなるほど大きくなります。

オフセット電圧Eoは次式で計算します。

この計算式は「反転アンプ」、「非反転アンプ」
ともに同じです。
アンプの入力がゼロといういうことは
図5のように表現できます。
反転、非反転は図5を良く見ると、
どちらも同じ回路です。

(計算例)

NJM4558の場合
    VIO = 0.5mV
図6の定数で
    Eo = {(10K+100K)/10K}×0.5mV 
      =5.5mV


入力バイアス電流 IB
★バイアス電流の意味

オペアンプの入力部はトランジスタ、
FET、CMOSなどの差動増幅回路で構成され、
NPNトランジスタでの構成例を図7に示します。

トランジスタはベースに
電流を流すことにより動作し、
これをバイアス電流と言います。

★入力バイアス電流IBの定義



図8ではそれぞれの端子に流れる電流の向きを
右にしていますが、これとは逆に
左に流れるオペアンプもあります。

これは、オペアンプの内部の入力回路がNPN
トランジスタであれば、右向きになり、
PNPトランジスタでは左向きになります。

(NJM4558はPNPなので左向きになります)
このバイアス電流もオフセット電圧として
出力に現れます。
入力オフセット電圧も含めたオフセット電圧は
図9の非反転アンプの場合、③式で表現されます。






③式において、右辺の第1項は「入力オフセット電圧」によるもの、
第2項と第3項は入力バイアス電流によるものです。
反転アンプの場合は図8の非反転アンプにおいて、Rinが無く、オペアンプのプラス端子をGNDに
接続したものですから、③式の第2項を削除したものになり、④式で計算します。



入力オフセット電流 IIO
入力オフセット電流 IIO の定義は以下のとおりです。



つまり、プラス端子とマイナス端子のそれぞれのバイアス電流の差分です。

オフセット電圧の計算例
①オペアンプの種類による違い

オペアンプの種類によりオフセット電圧がどのくらい出力されるか計算してみます。
図11は入力信号(0~1.25V)を0~2.5Vに変換する回路です。


比較するオペアンプは「LM358」と「LMC6482AI」で、規格は以下のとおりです。







このように出力におけるオフセット電圧の最悪値が予想されます。
例えば、ADコンバータを8ビット、基準電圧を2.5V(2500mV)とすれば、その1LSBは

    1LSB = 2500mV/256≒9.76mV

この場合、LM358を使用すると大きな誤差となり、LMC6482AIを用いれば
オフセット電圧はAD変換値に影響を与えないことが分かります。

このように図11のR1が1MΩと極端に高い例で計算しましたが、
抵抗値が大きい場合のオフセット電圧はバイアス電流による影響が支配的です。

バイアス電流はオペアンプの入力部の構造により大きく異なり、
一般的なオペアンプは入力部がトランジスタです。
このようなオペアンプを「バイポーラ構造」と言います。
また、他に「FET入力構造」、「CMOS構造」などがあり、バイアス電流はバイポーラと比較して、
FETおよびCMOSタイプのほうがかなり小さいです。表1に主なオペアンプの特性を示します。

バイポーラ構造のバイアス電流は概ね、nAオーダーですが、FETおよびCMOS構造はpAオーダーです。






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